地元の反発強まる「県流域治水条例案」(下)
「県流域治水条例案が成立したら、規制や罰則がかせられることになる長浜市の旧虎姫町の住民のみなさんは、本当につらい思いをされていることだろう。むごいとも言える罰則は勇み足だ」。高時川治水対策促進協議会の元会長で、元高月町長でもある北村又郎氏(79)=長浜市高月町=は、胸を痛める。
二百年に一度の洪水で、三メートル以上浸水する危険区域を指定し規制と罰則をかける「県流域治水条例案」。 危険区域対象地域は約千戸だが、このうち約八百戸は旧虎姫町(長浜市)に存在する。国営の丹生ダム事業が定まらないのを理由に、県が天井川の高時川(長浜市)、姉川(同)の河川整備計画を策定せず、住民は浸水の不安に絶えずさらされているのだ。嘉田由紀子知事の登場などで、治水安全度が最も高い丹生ダムも、それに代わる高時川などの河川整備も宙に浮いた格好だ。
●河川改修は県の責任
北村氏は「ダムよりも河川改修がいいとする嘉田知事なら、丹生ダムの中止を潔く求めて、国に責任を押し付けるのでなく、県独自で財源の裏付けを明確にし、高時川などの改修を行うのが不安を募らせる住民への、せめてもの良心だ」と指摘。
高時川と姉川の洪水調整などを目的に、琵琶湖総合開発事業として昭和六十三年から高時川上流で建設事業に着手されたのが丹生ダム。平成八年には水没地域の家屋四十戸が移転を完了している。
しかし国土交通省近畿地方整備局の諮問機関である淀川水系流域委員会では、ダムに慎重な学者らが勢いづき、平成十七年、丹生ダムや大戸川ダムなど淀川水系五ダム全ての建設中止が妥当との判断を下す。
国土交通省もこれを受けて丹生ダムを多目的ダムから治水限定ダムに計画を縮小する方針を打ち出した。同流域委員会委員でもあった嘉田氏が十八年の知事選で「ダムの凍結・見直し」を掲げて当選し、事実上、これらが契機になってダムが棚上げに向かっていく。
●ダムから河川改修へ
近畿地方整備局と水資源機構は先月三日、丹生ダム事業を検証する「検討の場」の第四回幹事会を開催し、治水目的ではダム案ではなく、河川整備をする三案が最も低コストとする評価結果を、県や長浜市などの関係自治体に提示した。
同ダム建設地(長浜市余呉町)の住民で組織する丹生ダム対策委員会の丹生善喜委員長(66)は「第四回幹事会ではコストだけが最優先され、ダム湖ができると観光などで過疎地の地元の活性化になると説明を受けて、ダムを受け入れてきた地元の思いが入っていない。ダムを中止に追い込もうとする国や嘉田知事には、観光振興や県道整備など、当初の約束事に対し責任を絶対に果たしてもらう」と噴っていた。嘉田県政のこれまでの治水政策そのものが問われようとしている。
【石川政実】







