地元の反発強まる「県流域治水条例案」<上>
◇全県
平成十八年七月十九日は、知事選で嘉田由紀子氏に敗れた国松善次氏にとって、二期八年にわたる知事職の最後の一日だった。同十五日から断続的に続いた雨で琵琶湖の水位が上昇して国土交通省近畿整備局琵琶湖河川事務所が全閉操作に動き始めたため、国松氏は血相を変えて同日、瀬田川洗堰(あらいぜき)=大津市=の全閉操作回避を求める緊急要請を近畿地方整備局長あてに提出した。それは、滋賀県知事としての当然の務めでもあった。結局、全閉する必要がなくなり、回避される。
県庁OB「宇治川改修急げとなぜ言わぬ」と憤る
全閉操作は、記録的な大雨になった場合、上流の滋賀県を犠牲にして、住宅などが密集する宇治市などの下流を守るために、国が洗堰を完全に閉めるものだ。明治三十八年、琵琶湖から流れる唯一の河川、瀬田川に南郷洗堰(瀬田川洗堰の前身)が完成して全閉操作の運用が始まったが、県にとってはまさに屈辱の歴史でもあった。
台風18号の記録的な大雨に伴い、琵琶湖河川事務所は先月十六日午前二時四十分~午後二時三十分まで約半日間、洗堰を四十一年ぶりに全閉した。その影響もあって、琵琶湖の水位が最大で約一メートルも上昇した。流入河川の水位も加わり、田畑は浸水を余儀なくされ、農作物被害は二十日現在で、千六百六十ヘクタール、約五億二千万円にのぼった。
県広域河川政策室によれば、琵琶湖河川事務所から十六日午前一時三十分ごろ、電話とFAXで「全閉操作を行う」との連絡が入ったという。中国に滞在していた嘉田知事が県担当者からフェイスブックで知らされたのは同日午前八時ごろ(日本時間)になってからだった。この間、嘉田知事が琵琶湖河川事務所と協議した形跡はなく、国松氏とはスタンスの違いをみせた。
嘉田知事は十七日の定例会見でも「全閉操作は下流の地域を守るために、ある程度は受忍をしなければならない。ただ、全閉の影響は最小化するよう国に申し入れたい」と、どこか人ごとのように話した。ようやく二十三日になって「全閉操作により琵琶湖沿岸の浸水被害が拡大した」と下流の自治体に対し農業被害などの財政負担を求める考えを示した。
これに対し琵琶湖河川事務所の北野正朗副所長は「今回の全閉操作による琵琶湖の水位上昇は、約五センチに過ぎない」と反論している。
国に対し全閉操作解消を訴えてきた複数の元県庁幹部は「今回の全閉操作は、琵琶湖河川事務所が瀬田川の下流にある宇治川の氾濫(はんらん)を心配したからだ。なぜ嘉田知事は『宇治川の河川改修を急ぐべきだ』と国などに抗議しないのか。台風18号の被害状況を踏まえ、本当に大戸川ダムや丹生ダムは必要がないのか、検証すべきだ。また全閉を含めた洗堰操作によって県内の浸水危険区域が変わってくるが、県の流域治水基本方針や同条例案には、全閉操作解消に向けた治水方針が抜け落ちており、極めて遺憾だ」と憤っていた。 【石川政実】







