県内でドイツ語を読んでいる有志の会が書籍出版
【全県】 今号から本紙での連載が始まったモーツァルト・バー「キール」(大津市浜大津2)店主の大矢敦さんによるコラム新シリーズ「モーツァルト 父の夢、子の夢」の原作となる書籍「モーツァルト 父の夢、子の夢―往復書簡から読み解く『父と子のデュオドラマ』―」(翻訳・モーツァルトの手紙を読む会)がこのほど音楽之友社から出版された。天から才能を与えられた稀代の音楽家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756年~1791年)の人間らしい素顔に迫る一冊として広く関心を集めそうだ。
同書の翻訳を手がけた「モーツァルトの手紙を読む会」は、2015年から県内でドイツ語を読んでいる有志の会が母体。大矢さんも参加する同会は当初、月に一回のペースでドイツ語の原典翻訳を通してドイツ語やその文化などを学ぶ計画をしていたが、大矢さんがモーツァルトとその父レオポルトの書簡をテキストとして提供すると、メンバーが俄然、父子の手紙の面白さに気付き、同会は知らぬ間に「モーツァルトの手紙を読む会」に変貌した。
生涯の3分の1を旅の空で過ごしたと言われるモーツァルトは家族などにあてた数多くの手紙を残している。これまでもそれらを日本語訳した書籍は存在しているが、時系列に整理されたものが大半で、当時の郵便事情などから一つの手紙を送った後に別の手紙の返事を書いているケースもあり、手紙のやり取りに込められた心の機微まで推しはかられるものは「ほぼなかった」と大矢さんは語る。
同会では、特に父レオポルトとの手紙に焦点を当て、やり取りされた内容の順を基本に再整理、資料としての面白さを保ちながら、父子の心のひだに分け入るように丁寧な翻訳を試みた。
同書は同会の活動成果の中から、1777年9月23日~1779年1月15日、モーツァルト21歳~23歳の「パリ=マンハイム旅行」にスポットを当てて取りまとめられた。この旅行は、モーツァルトにとって初めての父を伴わない旅行であり、初恋と失恋、旅先での母の死、就職失敗による挫折などが立て続けに起こる。それはやがて、神の次に信頼を寄せていた父への反発につながっていく。その過程を父子の手紙のやり取りから浮き彫りにしていく。
大矢さんは「手紙から自分の夢を子に託そうとする父の思いと、少年期から青年期へ向かい、父を乗り越えようとする子の思いが伝わってくる。この本から音楽室に飾られた肖像画の印象とはまた違う、人間くさいモーツァルトを感じてもらえたら」と述べている。
同書は1冊2750円(税込)。主な書店やインターネット書店などで販売している。







