大津市 「深刻な職員の士気低下」
越直美大津市長が誕生した平成二十四年から、副市長では笠松拓史氏、茂呂治氏(63)、市教育長では、富田眞氏らがいずれも任期半ばで辞職するという異様な事態が続いている。職員の一部は、越氏以外の立候補予定者を応援するケースも。こんな中、茂呂氏が副市長を辞める前に越市長に手渡した手紙を自らのブログ(「大津通信」)に書き込み、大きな反響を呼んでいる。そこで同氏にインタビューし、ブログの中身を検証してみた。【石川政実、高山周治】
茂呂さんは平成二十四年六月に副市長に就任したが、任期途中の二十六年五月に辞職したのはなぜか。
茂呂 越市長は市政運営にあたり職員や関係者の意見を聞こうとしない。多数の英知を集めることの大切さを訴えたが変わらなかった。庁内協議でも自分の考えのみに固執された。予算査定も担当課の説明に耳を傾けず「お金がない」の一言でカット。私も職員とのパイプ役を果たせず副市長の責任をとるため辞職した。
具体的には。
茂呂 市では在宅介護支援のため寝たきり高齢者の紙おむつ代を補助している。二十六年度予算で「おむつの交換時に使うビニール手袋も補助対象にして欲しい」との市民の声を受け担当部が二百万円程度の増額要求をしたが越市長は却下された。事業費のわずか一%未満の額で介護者の声に応えようとした部局の願いは無視された。越市長は看板政策のいじめ対策や待機児童対策に予算をつぎ込む反面、高齢者施策が手薄になるなど、政策はバランスに欠けた。
市の行革方針は「経営」「サービス向上」「健全財政」の三本柱だが越市長は「経費節減」ばかりだった。
しかし越市長がいじめ対策など教育に力を入れているのは評価できるのでは。
●尊重されない市教育委員会
茂呂 越市長は教育委員会や学校と信頼に基づく協力関係に至らず、議会でも問題にされた。教育委員会の主体性を軽視するような発言に教育委員会が困惑することも再三あった。
二十六年四月の協議で、同席した私が見かねて「それは言い過ぎです」と指摘した。するとその後の協議に「副市長は出席しなくてよい」と越市長から言われた。
予算でも越権的なことがあった。教育委員会予算は教育課程に関わるため学校現場の声も踏まえて各課が積み上げ、教育長や部長の査定を経てほぼ完成品の状態で市長査定に臨む。
これに対し越市長は一から細かな注文をつける。予算権は市長にあるが、地教行法二十九条に「首長は教育委員会の意見を聞くこと」とあり、主体性を尊重すべきである。二十六年度予算で越市長は教育委員会のいくつもの要求を認めず、英語教育のティーチングメソッド事業を逆提案した。結果として外国語指導助手の派遣委託などを含めこの事業に一億五千万円が計上された。
来年度から全小学校で小学一年生からの英語教育が始まるが。
茂呂 日々、子どもや親と向き合っている学校現場や教育委員会との協議が不十分なまま越市長の意向が色濃く反映されたという印象を受ける。成果や費用対効果はどのように検証されるのかも課題である。
市長と職員との信頼関係の欠如は市役所内部のことで、市民生活に影響がないとの声があるが。
●進まない庁舎整備
茂呂 そうではない。職員の間で閉塞感が広がり自由に意見を言えない状況にある。職員が市民のニーズに応えて工夫と努力を重ねなければ不利益はまち全体に及ぶ。職員の士気低下が大きな課題だ。施策面で見ると、いじめ対策に突出した予算を充てているが、組織内の連携が不十分で実効性の検証が課題である。
待機児童対策も「一瞬のゼロ宣言」のために多額の予算を使って定員割れの保育所を生み出した。
また大地震で倒壊さえ懸念される庁舎の整備も進んでいない。国の手厚い支援策(合併特例債)により市民の負担を減らすべきだが、条件である平成三十二年度の建物完成がクリアできるか懸念される。
市民センターや幼稚園の統廃合も市民の声を丁寧(ていねい)に聞いて慎重に検討するべきだ。これからマイナスがさらに目立ってくる。気づいた時にはもう遅い。
なぜ昨年八月になって、一年半前に市長に手渡した手紙をブログで公表したのか。
茂呂 手紙は市政運営について自省されるよう辞職覚悟で手渡したものだ。退任式でも同じことを述べた。市長は「これから周囲の意見に耳を傾ける」と約束されたが、それを果たされなかった。そこでブログを始めて手紙も公開した。特定候補を応援する意図はなく、市政の実態をありのまま市民のみなさんに伝えることが唯一の願いである。







