「加宿吉身」の町並み変遷を再現
●常識覆す郷土誌
【守山】 守山市の地名「守山」は、比叡山の東門を守る比叡山東門院守山寺に由来するというのが一般的だ。
しかし、その地名はもっと古く、大和朝廷が重要な地に置いたとされる「山部」・「山守」が「守山」に代わったとする説や、いにしえの守山には樹木が生い茂っていたため「杜山・森山・盛山」と呼ばれたという説を紹介するなど、常識にとらわれないスケールの大きな郷土誌が今、注目を集めている。
野洲川に近い同市南東部に位置する吉身地域。この吉身中町自治会が市制50周年(2020年)に合わせて、先ごろ発行した「吉身中町史誌」(A4判、242ページ)がそれだ。史誌の監修や執筆は渕上清二さん(74)=同市吉身=が担った。
古代から中世、近世、さらには明治、大正、昭和中期の近代、戦後から現代に至るまで、地域の歴史、伝統、習慣、風俗などを幅広く捉えて、郷土の進取の気性を浮かび上がらせた。
●加宿吉身の賑わい
また注目されるのは、これまであまり取り上げられてこなかった「加宿吉身」に迫ったことだろう。
江戸時代に整備された中山道の宿場町のひとつ、「守山宿」は当時、「京発ち守山泊まり」と言われるほど活況を呈した。このため守山宿に隣接する吉身も人馬を負担する「加宿」となり、さらなる賑わいを見せた。
史誌では当時の絵図などをもとに、この「加宿吉身」の町並みの変遷を再現している。
●地元企業掘り起こす
渕上さんは14年前まで地元銀行員だっただけに、埋もれた先駆的な企業家らを掘り起こす一方、竹仁染化TELなど有力企業の盛衰史の細部にも温かいまなざしを注ぐ。
米国のIT企業大手「アップル」の創業者の一人、スティーブ・ジョブズが好んだ名言『神は細部(ディテール)に宿る』のように、聞き取り調査などで細部にこだわった同史誌には、吉身中町自治会のみならず、同市、さらには県全体のアイデンティティまでもが示唆されているのだ。
渕上さんは「今回の史誌をきっかけに、かつての守山宿や加宿吉身のにぎわいをとりもどせれば」と話していた。
なお、この史誌の問い合わせは、同氏(TEL077・583・1599)まで。(石川政実)






