県外業者選定で激震の滋賀食肉センター 第3弾
【全県】 2007年4月から操業の食肉流通拠点、“滋賀食肉センター”の施設管理・運営を行う(公財)滋賀食肉公社は昨年12月、センターで牛の内臓処理をしている県副生物協同組合に対し、今年4月からの施設使用契約の更新拒絶を一方的に通知したため、同組合は2月、契約は存在していると大津地裁彦根支部に提訴した。公社や県が内臓処理を県外業者S社に委ねることに、「近江牛を売り渡すつもりか」(小西理・近江八幡市長)と憤る声も出ている。(石川政実)
食肉センターは、公社が近江八幡市の県有地に約40億円をかけて整備したもので、公社は食肉センターの維持管理・運営、(株)滋賀食肉市場は同センターで牛のと畜解体、副生物組合は内臓処理を行っている。
収入源は、公社が出荷者からと畜場使用料と食肉市場、副生物組合などからの施設使用料、食肉市場がと畜解体料、枝肉・生肉、副生物(内臓)の受託販売の手数料、副生物組合が食肉市場から購入した内臓の処理(水洗い)代金など。
●と畜計画はテンプラ!?
食肉センターの開設にあたり、県(公社)では牛の年間と畜計画を1万2千頭と見込み、と畜場使用料などを設定したが、07年から現在までの14年間、と畜実績は年間約8千頭にとどまっている。
小寺裕雄衆院議員は「食肉センターの設立時に県議であった私も、県から年間と畜計画1万2千頭の根拠を聞かされ、同センターの予算案を議会で承認した一人。しかし毎年約8千頭のと畜実績を見れば、県や公社が予算獲得のため確実性のない数字を計上したとしか思えない。その反省からも、近江牛の輸出拡大をお手伝いしたい。輸出を強化するには老朽化した食肉センターの大幅な施設改修が必要だ。財政的に厳しい県に代わり、改修には民間の資本を活用する『PFI』方式が望ましい」と提案する。
●公社と組合が係争中
と畜計画の見込み違いもあり、食肉市場と副生物組合の売上げが伸び悩み、公社への施設使用料にも未払いが生じた。このため公社は両者に対し、08年3月から10年間、支払いを猶予。猶予期間の終了以降は、食肉市場と副生物組合は未払い金(注)の分割弁済を続けた。
ところが昨年2月、副生物組合関係者がコンプライアンス(法令順守)に抵触する不祥事を起こした。このため公社は昨年3月から副生物組合と協議を続けて、同組合の役員交代や未払い金返済などを求めた。だが協議に進展がないとして、公社は昨年12月、今年4月から施設使用契約の更新拒絶を通知し、副生物組合に代わる内臓処理業者をプロポーザル(企画競争)方式で公募した。
今年2月3日、プロポーザル審査会に参加したのは県外業者のS社のみで、同社が選定された。この直前の同月1日、副生物組合が提訴したため、裁判で決着するまで内臓処理は同組合が事実上継続することになり、公社はS社との契約締結交渉を中断した。
近江牛の出荷者の間では「県や公社の幹部は、早い段階から副生物組合を排除して県外業者に肩代わりをしてもらうよう働きかけてプロポーザル入札にしたのでは」との憶測が広がった。
公社の東郷寛彦専務理事は「そのような事実は一切ない。公社が施設使用契約更新を拒絶したり、プロポーザルにしたりしたのは、副生物処理の適正化や取引の正常化を目指したもので、それ以外の意図はない」と否定する。
東近江市長「公社は組合と和解せよ」
●地元は県外業者警戒
副生物組合の村松安雄理事長は「年商が3000億円(連結)を超えるS社が内臓処理に参入すれば、将来的には食肉市場にも手を伸ばし、副生物(ホルモン等)のみならず枝肉も握る可能性がある」と危惧する。
農協系の県内肉牛生産者で構成する県肉牛経営者協議会(沢昌弘会長)は今年8月、公社の理事でもある全農県本部に対し「全農は肉牛生産者の代表として、食肉センターの運営に深くかかわりを持って地場産業としての方向性を見誤ることがないようにしてほしい」と要請。事実上、副生物組合排除の見直しを迫った格好だ。
公社理事である小椋正清・東近江市長は「先人の努力で県内の3と畜場が“滋賀食肉センター”として統合され、各と畜場で内臓処理を行ってきた地元業者も県副生物組合を設立し、みんなで近江牛のブランドを守ってきた。公社は過去の経緯を踏まえて副生物組合と和解し、近江牛の振興に努めてほしい」と訴えた。
同様に公社の理事である小西理・近江八幡市長は「地元畜産業の育成を大前提に県や公社は滋賀食肉センターの運営を行ってきたはずだ。大切な内臓処理加工を他府県の上場企業に委ねるなどもってのほかだ。県や公社は近江牛ブランドを売り渡すつもりなのか」と激しく批判した。
(注)今年3月31日現在の公社に対する未払い金は、食肉市場が8100万円、副生物組合が3500万円に上る






