木質研究所代表 野村隆哉さん
【湖南】 「自然の中に身をおき、木の温もりに触れることで、豊かな感性を育む場をつくりたい」と話すのは、手づくりの木造ミニコンサートホール(音療育館)や木のオモチャ館(木療育館)の今春開館をめざす野村隆哉研究所(木質素材機能研究所)代表、野村隆哉さん(81)。
このホールは、野村さんが「オータンの森」と名づけた湖南市三雲の山林に所在し、50人を収容。名前の由来は、次女が幼いころ同氏を「オータン(お父さん)」と呼んでいたことから。森の中には研究所のほか、木工クラフトのアトリエを構える。
「社会に役立ってこその学問」というのが信条だ。2003年までに京都大学木質科学研究所で木材素材の寸法変化や割れをなくす研究に没頭し、研究成果を地域活性化や国土保全に役立てようと、国内外で指導・普及に努めた。東南アジアでは、油の採取を終えて伐採されたオイルパームの木材再利用を世界で初めて成功させた。
退官後は、研究を続けるため現在の土地を購入し、研究所運営の傍ら、在官時代からの木工クラフトを通して木の素材がもつすばらしさを提案してきた。
作家歴は古く、3歳だった長女のため廃材でつくったカバやゾウのおもちゃづくりが、1974年の初個展のきっかけとなり、これを皮切りに2020年までに各地の個展や出展は約130回にもなる。
今春開くミニコンサートホールとオモチャ館の天井と床は、独自に熱化学処理した無垢のスギ板を使い、木の香りや風合いを生かす。壁にはホタテの貝殻を原料にした漆喰を塗り、適度に湿度を保つ快適な空間に仕上げた。館内には、長時間座っても疲れないという同氏考案の木製イスが並ぶ。
今年1月のプレオープンの際、参加者は床にごろ寝し、ライアー(竪琴)の音色に耳を澄ませるとともに、床から伝わる振動を楽しんだ。
「私がめざすのは『木育』でなく(自然の力を借りて心をととのえる)『木療』。木の良さを知ってもらい、感性を引き出すお手伝いをしたい」と、野村さんはいとおしそうにホールを見渡した。
なお、野村氏は一連の施設の公開をきっかけに、ライフワークである林業・木材産業の活性化の一助となるモデル事業を、三雲妙感寺地域で立ち上げたいとしている。






