三日月氏 知事選勝利を追う(10)
●忍びの者
湖国には昔、甲賀忍者がいたとされる。諜報活動を行う忍びの者は、男だけでなく、“くノ一”(女忍者)も加わり、歴史の舞台裏で暗躍していたに違いない。
今回の知事選では、マスコミ各社は忍者顔負けの取材合戦を繰り広げたが、そのあだ花として咲いたのが「小鑓(こやり)隆史メモ」であった。この怪文書が知事選を左右することになるのだ。
●永田町から怪文書
中央政界筋によれば、三、四月の早い段階で民主党関係者などから「小鑓メモ」が永田町で流れたという。
この怪文書は政界筋によれば、自民党に担がれて知事選に出馬した小鑓氏が二月末から三月中旬にかけて、大津市内で知事選に精通した県政担当の新聞記者らと懇談した際にしゃべったオフレコの本音トークがボイスレコーダーか携帯電話で録音され、新聞記者がそのデータを小鑓氏の相手陣営(必ずしも政党だけとは限らない)に渡し、それが回り回って東京などでプロの編集者が巧妙に再編集して、怪文書として流出したというものだ。
三月から四月にかけて怪文書が永田町の一部で試行的に出回ったものの、それから一か月後には、怪文書は本格的に県内の首長や県議に郵送される。さらに六月の告示前には、インターネットのフェイスブック上で紹介されて、拡散していった。 そこで怪文書の一部を抜粋してみよう。
「出馬を決意したのは、原発に反対する嘉田知事が『滋賀の恥だ』と思ったから。
あいさつのため県内の首長を回ったんだけど、変わったやつが多いね。特にT市長は変なやつだよね。あいつはぶっつぶす。(F市長は?)まんまやくざみたいなひとだよね。
県議とか市議とか、別にどうだっていい。信用しているのは自民党県連事務局長の清水克実さんだけ」など生々しい内容だ。
現在、横浜の自宅に戻り就職活動を行っている小鑓氏は本紙取材に対し「あの怪文書は、あまりにも下劣な内容なので、同じ土俵に立って抗議したり、内容を否定したりする気にはなれず、無視してきた。内容的には、わたしがいろんなところでしゃべったものを寄せ集めて言葉のニュアンスを変えたり、加筆したりして、悪意を込めた編集をしていた」と語る。
●一石四鳥
怪文書は、小鑓陣営にすさまじいダメージを与えた。“反嘉田派”の急先鋒(きゅうせんぽう)であったT市長やF市長を激怒させたことで小鑓陣営に走ることを足止めさせる一方、嘉田氏を『滋賀の恥』とこき下ろすことで同氏と三日月大造氏との連携を促した。さらに県議らの士気も低下させるなど、まさに一石四鳥の役割を果した。
永田町で出回っていた頃から怪文書の存在を知っていたとみられる小鑓氏や上野賢一郎・自民党県連会長(当時)をはじめ、この事態を早い段階で察知せず対処できなかった吉田清一・選対本部長(同)、家森茂樹・県連幹事長(同)らの責任も重大だ。
某記者がオフレコ情報を相手陣営に流していたなら、同氏こそが三日月知事誕生の最大の功労者であろう。
(石川政実)







