三日月氏 知事選勝利を追う(6)
●踏んだ虎のしっぽ
「来賓としてお越しいただいた百四十万県民を代表する知事に対し、あのように失礼な振る舞いをしたことに、同じ政治家として申し訳ない気持ちでいっぱいです」。参加したある国会議員は、電話で嘉田由紀子前知事に詫びたという。
二月二十二日に開かれた自民党県連の定期大会で、県連副会長の吉田清一県議は嘉田氏を前にして「一昨年、昨年で衆議院と参議院で議席を奪還できたが、まだ道半ば。再生のドラマを起承転結で言うと、これは起・承。転は今夏の知事選。結は来年の統一地方選」と口火を切った。
県連会長の上野賢一郎衆院議員が「県の未来は新しいリーダー(小鑓隆史氏)のもとでがんばりたい」と宣戦布告すると、会場が割れんばかりの拍手に包まれた。
嘉田氏はこれ以降、後継者の三日月大造氏(元民主党衆院議員)とタッグを組んで応援に走り回ることになるが、それは鬼気迫るものだった。自民党県連は、四年前に約四十二万票を獲得した「五黄の寅」のしっぽを踏んだのだ。
●一転し現職批判控える
さすがに自民党県連も「これはまずい」と気づいたのか、四、五月ごろから嘉田氏批判を控える戦略に転換する。
「それがまた裏目に出てしまった」と語るのは、冨士谷英正・近江八幡市長。
首長選のスタートは、現職あるいは現職後継候補が知名度などで有利とされる。それだけに小鑓氏などの新人候補は現職を批判し、支持をどれだけ伸ばせるかが勝負になる。
「しかし、今回は自民党の高い支持率を背景に、当初から新人候補が現職後継候補を上回る異例のスタートになった。このため自民党県連は一転し、現職(嘉田氏)批判を控えて、国政問題の経済再生(アベノミクス)を訴え、県政問題に即した政策論より、イメージ重視の選挙戦略をとった。僕にはなにが言いたいのか、さっぱりわからなかった。この結果、三日月氏は、現職の県政課題を指摘されず、後継者としてダメージを受けずに済んだ。敗因は、新人候補でありながら、県政の政策論を訴える謙虚さを忘れたことだ」と冨士谷市長はバッサリと斬る。
●組織弱体化も敗因に
県立大学の大橋松行教授は「自民党本部が延べ二百人の国会議員を滋賀県に送り込んだことで、三日月氏は、武村正義元知事、嘉田知事とスクラムを組み、『草の根自治を守ろう』と小鑓氏への批判を展開し、急速な追い上げに成功した」と分析。
「そこへ原発問題と、七月一日の集団的自衛権行使容認の閣議決定が争点に加わり、小鑓氏には"逆風"になった。組織の弱体化が進む自民党県連には、これを跳ね返す力はもはやなかった」と指摘する。
冨士谷市長は「自民党県連が長老県議の県議会会派代表辞任で、知事選総括としてお茶を濁すなら、来春の県議選では、現職七人が落ちるだろう」と警鐘を鳴らしていた。
(石川政実)







