元大阪市立大学大学院教授の畑氏ら出版
◇全県
イタイイタイ病裁判判決後(昭和四十七年)から四十年以上にわたり、発生源対策に取り組んできた元大阪市立大学大学院教授の畑明郎氏=滋賀県=と、発生地域である富山県の放送局で昭和四十一年から取材で関わってきた向井嘉之氏=富山県=は、同病を徹底的に検証することで、我が国最大の公害である福島第一原発事故へ生かす教訓を示した共著「イタイイタイ病とフクシマ ―これまでの100年これからの100年―」(梧桐書院)=本体千八百円=を刊行した。
命より国策優先の時代に警鐘
イタイイタイ病は、富山県の神通川流域で発生した四大公害病の一つで、三井金属の神岡鉱山(岐阜県飛騨市)から流された重金属「カドミウム」を含んだ排水が原因。明治四十四年頃(一九一一)から、汚染された飲み水やコメを摂取した流域住民の間に広がり、昭和四十三年になってようやく国から公害病に認定された。昨年、同社と被害者団体が全面解決を確認する合意書に調印した。
症状は、カドミウム蓄積に伴う腎臓障害により、尿とともにカルシウムが体外へ排出され骨軟化が進む。重症の場合、くしゃみ程度で骨折するほどで、激痛に耐えかねた患者が「痛い、痛い」と叫んだのが病名の由来である。
「いのちより経済が、そして人々の息づかいが聞こえる地域より国が優先される時代であってはならない」と主張する同書は、第一部で、住民と企業の百年余りにわたる闘争を概観しながら、なぜ公害の被害者が長い苦しみの道を歩まねばならなかったのか、「公害の構図」を向井氏が示した。
第二部は畑氏が執筆。福島第一原発の現地調査を踏まえて、「公害と原発」という視点から、土壌汚染、廃棄物、汚染水問題などについて問題点を指摘する。さらに、四十年以上にわたるイタイイタイ病対策の経験を踏まえ福島放射能汚染への政策提言も行った。
最後の第三部では、畑・向井の両氏が対談し、「国の対応や被害者救済の遅れは、まさしくイタイイタイ病など四大公害と同じ経緯をたどりつつある。イタイイタイ病は現実から目をそらす政治が解決を遅らせた。フクシマも同じ轍(てつ)を踏んではならない」と、国策のもと住民を置き去りにした産業のあり方に警鐘を鳴らし、同書の締めくくりでは「イタイイタイ病は終わっていない。そして、フクシマは始まったばかりだ。これまでの百年と、これからの百年を考えるキーワードは、『人間の尊厳』である」と、再生のヒントを示唆している。(高山周治)








