著書のある高谷清氏が講演
◇湖南
心身障害児教育の第一人者である糸賀一雄氏生誕百年記念事業の一環で、同氏の著書のある高谷清氏(びわこ学園医師)が湖南市内で講演し、当時の様子を伝えるスライドとエピソードを交え、糸賀氏の思想を紹介した。
糸賀氏は、戦災孤児や心身障害児の教育を放置しては、真の日本復興はないとして、教育家の池田太郎、田村一二の両氏と共に、全寮制の近江学園(現在は湖南市)を戦後間もない昭和二十一年、大津市南郷に設立するなど、先駆的な取り組みを実践した。
学園は設立当初、戦災孤児が多かった。「浮浪児狩り」で連れてこられた子どもらは、街で虐待を受け、人間・大人に対する信頼がなかった。
講演では、修学旅行の逸話が紹介された。孤児と障害のある生徒は通常、別行動をとっていたが、ある旅行から生徒提案で合同に。
孤児の生徒は、心身の不自由な生徒を六キロ離れた最寄りの駅まで背負い、旅先では旅館従業員の好奇な目や他校生徒の中傷からかばった。神社では、門前で車いすから降りて歩くよう指示する守衛に、「車いすはこの子らの足なんです」と理解を求めた。修学旅行は、孤児による「万引き」、「けんか」なく、成功を収めた。
高谷氏は、助け合った修学旅行の逸話を通じて、糸賀氏の思想を表す代表的な言葉「この子らを世の光に」の意味について、「この子ら(孤児、障害児)は光を持っているが、出せない状態。光は誰もが持っている。この子らの光を出していく中で、自分たちの光を出せた」と解説した。
さらに「人間の存在は、ともに支えあいが基本。相手の気持ちを思いやり、得たものは分配する。そういうなかで気持ちが通じ合う」と語った。
また、糸賀氏生誕百年の意義について「顕彰で終わらせるのではなく、業績と思想を次世代に伝え、生かし、発展させることが重要」と強調した。







