統合失調症発症の分子機構解明へ
◇守山
県立成人病センター研究所(守山市)の谷垣健二専門研究員らは、イタリア遺伝学・生物物理学研究所のエリザベス・イリングワース教授、奈良県立医科大学精神医学講座の岸本年史教授らとの共同研究により、統合失調症発症に関与する新たな神経機能異常を見出し、その機能異常の発現に関与する遺伝子も明らかにして、トランスレーショナル精神医学誌に報告した。
統合失調症は、遺伝学的素因が八〇%以上を占める多因子遺伝病だが、その遺伝性の複雑さから、発症のメカニズム、発症に関与する遺伝子群は未だよくわかっていない。しかし最近のゲノム医学の進歩により、非常に小さな染色体領域の欠損が統合失調症に関与することがわかり、統合失調症の発症メカニズムの解明につながるのでは、と注目を集めている。
染色体異常による「22qll.2 欠損症候群」の患者は、三人から四人に一人は統合失調症を発症することが知られている。今回、谷垣専門研究員らは、「22q11.2 欠損症候群」では興奮を抑える抑制性介在神経細胞の機能異常が認められ、この機能異常が染色体異常によって失われているカテコールー0―メチルトランスフェラーゼ(COMT)という遺伝子の可能性があることを明らかにした。
さらに、抑制性介在神経細胞の機能異常が統合失調症発症に関与する可能性を検討するために、「22q11.2 欠損症候群」のモデルマウスの統合失調症様行動異常に対し、介在神経細胞の機能を補償するような薬理学的処理(GABAA受容体作動薬の投与)を行い、治療効果があることを見出した。
統合失調症の死後脳の病理学的解析によって、抑制性介在神経細胞の異常が示されていたが、今回の研究成果により(1)「22q11 欠損症候群」でも抑制性介在神経細胞の機能異常が統合失調症発症に関与する(2)COMTという遺伝子が介在神経細胞の機能を調節している(3)このためCOMTという遺伝子の欠損が統合失調症発症に関与する可能性がある(4)「22q11.2 欠損症候群」の統合失調症に対しては、GABAA受容体作動薬が治療効果を持つ―などが明らかになった。





