地元住民、中途半端な企業誘致に失望感 県「今後の企業誘致は市がメーン」と釈明
◇湖南・栗東
梅雨時期にもかかわらず、晴れ間がのぞいた六月下旬、新幹線新駅計画跡地(栗東市)では、重機が地響きをたてながら、せわしく行き交っていた。造成工事が進められているのは、平成二十四年度から操業開始するジーエス・ユアサ(京都市)の電気自動車用リチウムイオン電池工場用地。新駅に代わる代替プランの中核である。新幹線新駅計画の中止は地元に何を残したのか――。 【高山周治】
「(嘉田知事は)壊すだけの知事と言われているが、中止させた新幹線新駅跡地には、税金を使わずに民間企業を誘致し、さらに八百人の雇用を成功させたじゃないですか」。
これは再選を目指す嘉田氏が、知事選の個人演説会で必ず切り出す口上である。
県は平成十九年十月末の新駅中止以降、区画整理事業跡地(蜂屋・上鈎・下鈎甲・手原)の地権者約三百人に代替案を示せずに焦っていたが、昨春、渡りに船の企業進出が浮上した。ジーエス・ユアサが全国で用地を探していたのだ。
県と市はこれに飛びつき、同事業跡地の主要道路などを基盤整備する「後継プラン」として、県、市の折半で三十億円を負担する優遇策を打ち出し、同社の誘致にこぎ着けた。
新駅中止で財政破たん寸前に陥ったとする市は、同社に対して固定資産税を五年間免除する優遇策を行うなど、地域活性化の切り札として期待を寄せる。
しかし、同社と関連企業が入るのは、区画整理事業跡地五十ヘクタールのうち全体の二割の十ヘクタール(ユアサ五・六ヘクタール、関連用地四・四ヘクタール)に過ぎず、ほかの土地は手つかずのまま残っている。
この現状に、地権者四集落を代表してきた寺田範雄さん(65)=同市上鈎=は、「区画整理事業全体のまちづくりを願っていたのに、こんな中途半端なやり方はしてほしくなかった。跡地の一部(蜂屋)に工場が進出するだけで、その他の地域は何もないばかりか、調整区域から市街化区域に変更されたので固定資産税の負担が以前より重くなった」と憤る。
さらに「県や市が他の土地をこのまま放置すると乱開発の恐れも出てくる。県は新駅をつくる時は熱心に協力を求めてきたのだから、中止した以上は、責任逃れせず最後まで後始末をすべき」と訴える。 これについて県新駅問題支援対策室は「基盤整備は実施するが、企業誘致は市がメーン」と釈明すれば、片や市地域整備課は「税控除や用地取得支援で企業進出を呼び込みながら、乱開発に規制をかけるためにも、まちづくり計画をできるだけ早く策定したい」と苦しく説明する。
ジーエス・ユアサの工場進出が決まっても、各自治会で恩恵の度合いは異なるため、地域内の連帯感はバラバラになってしまった。地元の対策委員会は今年三月、跡地問題は一応一区切りついたとして解散し、かつてのように住民同士でまちづくりを考える場はもうない――。






