元従業員証言の箇所、掘削調査せず ボーリング調査では見つからない恐れも
◇湖南・栗東市
猛毒の硫化水素が平成十一年十月に発生して十年以上たったが、いまだにRD産廃処分場問題(栗東市小野)は未解決である。場内には豊島問題(香川県)に匹敵する産廃約七十一万立方メートルが埋められ、ダイオキシンなどの有害物が地下水へ流出し、飲み水の七割を地下水に頼る市民にとって不安の日々が続いている。二十日、有害物調査の地元合意がなされたものの、知事選までにめどをつけようとした、県の見切り発車ともいえる。嘉田県政は地元住民といかなる「対話」を行ってきたのか、検証してみた。 【高山周治】
「合意と納得を基本スタンスに取り組みたい」。告示直前の二十日、滑り込むように得た、有害物調査についての地元合意の会場で、嘉田由紀子知事は神妙な面持ちで決意を語った。この言葉を周辺六自治会の関係者は、冷めた目で眺めていた。
県は硫化水素の発生以来、高濃度の地下水汚染が確認されているのに「総じて問題ない」としたり、不適切な調査などで住民の信頼を失っていた。
平成十八年七月の嘉田知事就任以降も、県調査委員会の全量撤去案を財政難を理由に退け、有害物封じ込めの「原位置浄化策」にトーンダウンした。
それが今年一月、「有害物をなるべく除去する」とした環境省の助言を受けた対応方針を発表してから、県と住民の協議が加速した。そして有害物調査についてまず合意し、対策工については今後協議を続けることになった。
この合意に「見切り発車や」と、当初から運動に関わってきた住民、青木安司さん(産廃処理を考える会代表)は、会場の一角で不安感を隠し切れずいた。
「調査と対策工は連動したものなのに、何を基準に有害物を取り出すのか、大事な議論は後回しになっている。行き先の分からないバスに急いで乗るようなものです」と危惧した。
有害物調査について県は、基本的にボーリングで実施するとしているが、これまで場内のボーリングで有害物が見つかったことはほとんどない。
元栗東市RD調査委員会委員で、土壌汚染の第一人者の畑明郎・大阪市立大学大学院特任教授は「ドラム缶などに詰められた有害物が外部に漏れて拡散すると濃度は薄まるため、広大な処分場でピンポイントによるボーリングを行っても、有害物を検出することは困難であり、有害物が存在しているのに、存在しないと間違った判断が下される懸念が常に存在する」と指摘し、これまでドラム缶約百本など見つけてきた直接掘削をすべきと主張する。
今回の周辺六自治会から県へ提出された見解書にも「元従業員の証言なども重要な根拠として掘削除去を行う」の一文が盛り込まれているが、県の本音は「元従業員の証言は十年以上の前のことで、信ぴょう性に欠ける。データとの裏付けをしてから」と住民の意識とズレがある。
RD問題は、常に新幹線新駅問題とコインの裏表といわれ、新駅中止前は「県が有害物除去を負担すれば、新駅建設費百十七億円が負担できなくなる」と関係者の間でささやかれ、「ことなかれ主義」的な解決が模索されていた。そして現在も、さらに県の財政難に拍車がかかり、対策工法が大きく後退する懸念も出ている。






