よし笛演奏・はなちゃんず
【東近江】 昨年7月、東近江市あかね文化ホール(東近江市市子川原町)で日本フィルハーモニー交響楽団など音楽界のトップで活躍する奏者たちによるコンサートが行われ、盛況を博した。そのなかで特別企画として、東近江市在住のよし笛演奏家・中村由紀子さん(63)がステージに上がり、トップ奏者たちと堂々たるコラボレーションを披露した。「よし笛というものを初めて知った」、「こんな素晴らしい音色の笛があると知らなかった」と来場者からは驚きの声もあったという「よし笛」について、製作者の「よし笛工房 彰」中村彰宏さん(64)と演奏者の由紀子さんに話をうかがった。(矢尻佳澄)
特許を取得したよし笛が著名人も魅了
独特なゆらぎが人をひきつける癒やしの音色に
2002年から夫婦で演奏活動を始めた彰宏さんと由紀子さん。ユニット名を愛犬の名前から「はなちゃんず」と名付け、当時住んでいた京都府宇治市を拠点に笛楽器のオカリナやコカリナによる演奏を披露していた。そして演奏活動を始めてすぐに、2人の出身地である滋賀県ゆかりの植物である「葦(よし)」を使った笛で演奏したいと思いつき、市販されていた葦笛を取り寄せ、吹いてみた。
――その時の笛は音色、表現力ともに、2人が満足のいく笛ではなかった。
そこから2人は、「気に入った笛がないのなら、自分で作るしかない」と一念発起。
メインで笛を吹く由紀子さんの要望を聞きながら手先の器用な彰宏さんが自作にチャレンジし、「やさしく澄んだ、奥の深い音色のする、表現力豊かな、かわいらしい……」そんな理想の音色を追い求め、何度も試行錯誤を繰り返した。やがて1年半にもおよぶ努力が実を結び、ついに納得のいく笛を2人は完成させた。
彰宏さんが手がける「よし笛」は、葦の管で約2オクターブの音階が出せる縦笛で、長さは24センチほど。葦の管に7個の穴が開いていて、笛の上部に高度に調整された竹でできたマウスピース(音を出しやすくする補助具)があり、誰でも音を出しやすい仕様になっている。葦でつくられたこれまでの笛とは一線を画す製法になったこの笛は、やわらかい印象をもたらす「よし笛」の名称で、2006年に特許を取得している。
このよし笛を使った演奏が人気を呼び、「はなちゃんず」はよし笛ユニットとして本格的な活動を開始。コンサートでよし笛を披露すると独特な音色が来場者の関心を誘い、ある時はスタジオジブリで「となりのトトロ」などの美術を担当した男鹿和雄氏によし笛の音色が気に入られ、個展で特別演奏を行ったこともあるという。
彰宏さんが手がける「よし笛」は1本1本異なる「葦」を使っていることから、出来あがる笛の音色にはまるで人のような個性があらわれ、そこがとても魅力的だと由紀子さんはほほ笑む。舞台映えを意識し、見た目の華やかな笛づくりにこだわる一方、初心者でも吹きやすい入門用の笛も製作している。
「よし笛を滋賀県の民族楽器にしたい」とこれからの展望を語る2人。「演奏、指導、製作」の新たな担い手づくりも意欲的に行っている。
よし笛についての問い合わせは、はなちゃんず事務局(hanachans@yoshibue.com)へ。










