産業集積急ピッチの守山市―その光と影
【守山】 電子部品メーカーの村田製作所(長岡京市)は2月、守山市のJR守山駅東口前に18階建ての研究開発拠点の建設に着工している。この約1万平方メートルの建設用地から環境基準を超える自然由来のフッ素が検出されたため市は昨年、約10億円をかけて汚染土壌の掘削除去・汚染土壌処理をして、村田製作所に約36億円で売却した。しかし市民からは「多額の掘削除去・汚染土壌対策は不要であり、住民監査請求を検討したい」との声が上がっている。(石川政実)
「10億円は不要」と住民監査請求の動きも
市はJR守山駅東口前の市有地を村田製作所(以下、村田)に売却するにあたり、2021年に地歴調査を実施した。対象区域内には、1918年から72年まで「江州煉瓦⑭」のレンガ工場があったが、自然のものを原材料にしており、土壌汚染のおそれはないと結論付けた。
しかし、買主である村田は2022年、民間調査会社を使って独自に調査したところ、市の対象用地(調査16区画)のうち、フッ素について基準値(0・8ミリグラム/リットル)を超える土壌汚染(4区画)が見つかった。
そこで市と村田は同年11月、県南部環境事務所に相談に行った。
この時の議事録には、県が「村田は土壌汚染対策をどのレベルにしたいのか」と質したところ、同社は「新建物建設時に、(土壌汚染対策法の4条2項申請において)県から調査命令がかからないようにしたい」と述べると、県は「調査命令は出さない。土壌汚染の恐れがないからだ。また住民への影響として地下水汚染が考えられるが、今回のようなフッ素による地下水(汚染)は、自然としても発生するものなので、厳しく対策する意向はない」との見解を示した。
県は、直接飲用しない自然由来のフッ素の汚染土壌対策について厳しく対策することを求めていなかったようだ。だが市と村田はあくまで汚染土壌の掘削除去・汚染土壌処理を自主的に行うとして、県に作業アドバイスを求めた。市は村田にあらがえず配慮したのかもしれない。
住民監査請求を検討中のN氏は「市は、過剰な汚染対策の根拠として22年4月に市と村田が結んだ不動産売買契約書を挙げる。その12条には、『本物件が契約内容に適合しないもの(土壌汚染など)があるときは損害賠償の請求、契約の解除ができる』とあるからだが、自然由来のフッ素の土壌汚染対策として掘削撤去・汚染土壌処理する必要があるとは書かれていない。土壌汚染対策法では、覆土(ふくど)処理なども認められており、これでは費用はほとんどかからない。10億円も費やした汚染土壌とレンガ屑などの全量撤去は不必要であり、市民に多大なる損害を与えたのではないか」と指摘していた。
むしろ問題は播磨田のPFAS汚染だ
日本環境学会元会長・元大阪市立大学大学院教授 畑 明郎
守山市が予定の村田製作所用地の地歴調査を実施したところ、かつて「江州煉瓦⑭」の工場があったが、自然のものを原材料にしており、汚染土壌のおそれはないとした。しかし土地の買主の村田製作所が土壌汚染調査を実施したところ、溶出基準を超えるフッ素が約4分の1の区画で検出されたので、約1万平方メートルの用地所有者の同市は、約1700立方メートルの掘削除去・汚染土壌処理を実施した。また、レンガ塊などの廃棄物も多数見つかったので、約1万6千立方メートルの撤去・廃棄物処分場搬入を実施した。10億円近い費用がかかったが、全額を土地所有者の守山市が負担した。
フッ素の原因としては、レンガ製造に使われた粘土、埋め戻し土壌、古琵琶湖層土壌などに自然由来のフッ素が含まれていたことが考えられた。滋賀県の地下水概況調査でもフッ素は守山市も含めて環境基準以下ながら広く県内で検出されている。したがって、直接飲み水に使うわけではないので、多額の費用をかけた掘削除去・汚染土壌処理が必要だったのか、疑問が残る。土壌汚染対策法では、地下水を直接飲用しない場合は、覆土処理なども認められており、ほとんど費用がかからない。また、レンガ屑は無害な廃棄物であり、地下工事に支障がない程度であれば、全量撤去は不要であり、費用はほとんどかからない。
つまり、10億円近くかかった汚染土壌とレンガ屑などの撤去・処分費用は、不必要な支出をしたことになり、市民の損失となる。
むしろ市が問題とすべきは、自然由来の無機フッ素でなく、人工合成物質で発がん性のある有機フッ素化合物(PFAS)が、2021年度に同市播磨田水源地で30ナノグラム/リットル検出されていることだ。国の暫定目標値50ナノグラム/リットルは下回るが、琵琶湖の5ナノグラム/リットルやアメリカの基準8ナノグラム/リットルを約4倍上回るなどPFAS汚染が深刻になっており、市は汚染源調査と対策を早急に実施すべきだ。







