能登川博物館で企画展
【東近江】 元号「令和」の引用もとになり、約1200年前に編まれた日本最古の和歌集「万葉集」。その中で額田王と大海人皇子が詠んだ有名な相聞歌の舞台、また、奈良時代を代表する万葉歌人・山部赤人が余生を過ごした場所が蒲生野とされ、そこに位置する東近江市には、万葉文化を伝える歌碑や記念碑など、国の重要文化財も含め数基建立する。だがそれだけではない。万葉文化を継承・発信する様々な取り組みが広く市民間で行われているところが非常に興味深い。
能登川博物館(山路町)では、東近江市博物館グループ企画展「東近江の万葉文化」が開かれ、市内各地に建立する歌碑のほか、万葉文化に取り組む市民団体などの活動を紹介。地域に根付き、今も育まれている万葉文化の姿に迫っている。
取り組みの一つに、万葉の古代をしのばせる花「ムラサキ(紫草)」の栽培が挙げられる。額田王と大海人皇子の相聞歌にも詠まれている通り、蒲生野には多くのムラサキが群生したと言われている。その風景が蘇ることを期待し、2007年には東近江市の花にも選定された。
また、ムラサキの根が古来より皮膚病薬や紫色の染料として使用されていたことをヒントに、2000年に万葉の森船岡山公園で栽培研究が始まると、地元の八日市南高校を事務局に「紫草を育てる会」が04年に発足。栽培が難しいとされる紫草であったが、徐々に研究成果も出始め、17年には、東近江青年農業者クラブとの連携研究が優秀農業青年クラブで県内初の最優秀賞(農林水産大臣賞)に輝くなど、ムラサキを通した万葉文化の継承活動も昨今では著しい。
そのほかにも、船岡山の麓に位置する市辺地区では、いちのべ万葉フェスタのなかで蒲生野万葉短歌会と称した募集型の歌会が開かれ、額田王立像が安置されている市神神社(八日市本町)では、和歌を献詠する額田王祭を毎年開催。また、万葉文化をはじめ、郷土史の究明を目的に1968年から発行され続けている八日市郷土文化研究会の機関誌『蒲生野』が昨年で50号を迎えるなど、数多くの取り組みが市民間で発足し、独自の形で万葉ロマンが引き継がれている。
東近江市のまちを歩けば「万葉」や「あかね」といった、万葉集にちなんだ看板や商品がよく目に入るのも、万葉文化が地域に根付き、親しまれている証拠だろう。同館学芸員は「市内の万葉歌碑をめぐり、歌を詠みながらその場の空気を感じて思いを馳せてほしい。地域の万葉への想いを再確認する機会になれば」と話している。
企画展は11月3日まで。入場無料。






