「王ノ浜」の若宮神社
近江八幡市白王(しらおう)町には、名称の同じ若宮神社が二社ある。明治十二年に合併するまでの、王浜(おのはま)村と白部(しらべ)村のそれぞれの鎮守である。かつての王浜村の若宮神社は、ご祭神として惟喬親王を祀る。
『近江八幡ふるさとの昔ばなし』につぎのような物語が収録されている。
「清和天皇のころ、この辺りは葦原で勝浦とよび、民家二、三戸の建つ寂しい孤島であった。ある年の時雨どき、村人が沖から流れてきた船を見つけた。それは京から遁れ、隠れ場所をさがしておられた惟喬親王の船であった。
親王は雨露をしのぐ質素な岩屋で、郁子(むべ)を常食として過ごされていたという。村人たちは、朝な夕なにその親王をお慰めしお仕えした。親王は村人の誠意に感じ、とくに『王』の字を村名にすることをお許しになった。以来、この地を王ノ浜と呼ぶようになった。」
若宮神社の背後に、池ヶ峯とよぶ標高二三八メートルの山があり、頂上のちかくに池がある。親王はこの池の近くの岩屋に住まわれ、人々に手芸や細工などを教えられたとも伝えられている。
中島 伸男
(野々宮神社宮司)






