第2回 歴史と文化の町に秘められた美~朝日野駅-京セラ前駅~
昨年の晩秋、八日市駅のギャラリーで「近江鉄道十三景in東近江」写真展を開催していた時のことだった。
おばあさんが、1枚の写真の前にたたずんで、微動だにせず長時間、その写真の中の風景を見入っていた。
私が気になって、「この場所は、ご存知ですよね?」と声をかけると、おばあさんは私の顔をみつめながら
「ここ、めっちゃきれいなんやけど、一体どこなんやろうか?」
私が撮影場所を答えると、おばあさんは目を丸くしながら
「えー?私は近所に住んでるから、しょっちゅう通ってるはずなんやけど。こんなにきれいに映るんやねぇ」
と感心した様子で再び写真を見入っていた。
びわこ学院大地域調査PT「近江鉄道十三景in東近江」
中国の宋の時代の詩人、蘇軾(そしょく)の書いた漢詩『題西林壁』の中に、「不識盧山真面目,只縁身在此山中」(廬山の正体を知らざるは、ただ、その山の中に居るからである)という一節がある。
おばあさんは、周りの自然を日常風景として見慣れてしまっていたために、この風景を改めて見ることがなかったのだろう。写真に映し出された風景は、「他者の目」というフィルターをとおし、日常の見慣れた風景を切り取って1枚の額に収められたことで、新たな輝きを放ちはじめた。
今回、案内するのは、蒲生地区の朝日野駅、朝日大塚駅、桜川駅と京セラ前駅である。
蒲生地区は、工場誘致に合わせてつくられた京セラ前駅を除き、百年以上の歴史がある駅だ。沿線には、懐かしいガリ版の発祥の地や、近江が生み出した洋画家、野口謙蔵記念館など、文化的要素にも恵まれた地域である。
桜川駅の界隈は、明治・大正時代は商売でにぎわった。今も、その痕跡を垣間見ることができる。
学生と共にこのあたりをフィールドワークした際には、住民の西田善美さんが水先案内人を務めてくださった。
「かつてここは『小房銀座』とよばれた佐久良川村の中心地でした。さまざまな地域から一旗揚げるために、この地に人がやって来て新たな商売をはじめ、そうして『活性化』がおこりました。桜川は、そんなDNAを持つ『寄り人の町』なのです」と。
日本の地方は閉鎖的とよく言われるが、外国から来た私でさえこの地に来て疎外感を感じたことはない。むしろ仲間だと温かく迎え入れてくれる。よそ者を取り入れて発展してきた歴史のDNAは今も受け継がれていることを感じる。
ほかにも、蒲生地区は、近江商人や文化に関する興味深いエピソードがたくさん埋まっている。それらの物語をうまく掘り起こすことができれば、かつてのにぎわいを取り戻せる可能性がある。笑顔で多弁な西田さんの語りから、その息吹が力強く感じられた1日だった。
本文=パン・ジュイン びわこ学院大学教授、スポット紹介=学生担当。
京セラ前駅 あかね古墳公園
県内でも最大級の古墳群で、復元された古墳は一番上まで登ることができるよ。天気の良い日に行くと、夜は満開の星空を楽しむことができます。夏には、蒲生の花火が上から見られ、展望台へと早変わり!周辺には聖徳太子が建立した願成寺があり、のどかな田園風景で時間を忘れてリラックスできるからおすすめです。東近江市木村町。京セラ前駅より西へ徒歩20分。
桜川駅 桜川駅
1900年に開業した当時のままの木造レトロ駅舎。桜川の町にはにぎわいもあり、ここを拠点に石塔寺や日野方面へのサイクリングを楽しむのがおすすめ。
朝日大塚駅 野口謙蔵記念館
野口謙蔵記念館は、昭和8年に建てられた画伯のアトリエを復元した施設です。関連の資料と蒲生野を描いた絵が3点展示されています。入場料は一般200円 大学生・高校生150円 小・中学生100円。東近江市綺田町。朝日大塚駅より東へ徒歩20分。
朝日野駅 梵釈寺
宝冠阿弥陀如来は、平安時代に制作されたもので、国の重要文化財にも指定されていてビックリ!境内の石造宝篋印塔は、鎌倉時代に建てられたもので、これは国の重要美術品に指定されています。東近江市蒲生岡本町。朝日野駅より徒歩20分。ガリ版伝承館からだと、東側への踏切を経てすぐ。
朝日野駅 ガリ版伝承館
今では見られない昔の印刷技術が展示してあり、実際にガリ版の体験ができる珍しいスポット!また、敷地内のホールで奇数月の第4土曜日に開催される「ガリ版・マルシェ」というハンドメイドショップが集まるイベントは絶対に行くべし!その他にも近くにある高木神社や湧泉寺などの寺社巡りができますよ。東近江市蒲生岡本町。朝日野駅より北へ徒歩20分。










