近江八幡市長 冨士谷 英正
今月末に政府が「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」を閣議決定すると報道されております。その方針の1つ「大都市圏の高齢者の地方移住」については、各方面で議論百出であります。事の発端は、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)の75歳以上の高齢者が今後10年間で175万人増え、そのため医療、介護の人材が80~90万人必要となる一方、地方は施設や人材に余裕があり、サービス費用も安価であるとの理由で、高齢者の地方への移住先として26道府県41地域を、有識者らでつくる「日本創生会議」が提言したことにあります。
移住先適地とされた自治体の反応は、「自分たちの市の課題解決で精一杯」、「適地とされたことに違和感がある」、「まずは市内の特別養護老人ホームの入所待機者を減らすことが優先。移住はそのあとのこと。」等や、一方で「若い人の地方での就職が増える」との声もあり、さまざまであります。また政府は、「姥捨て山をつくるのではない。」と地方の不安に対して火消しに躍起になっております。しかし、冷静に物事をみますと、東京圏に高齢者がとどまって介護施設が増えると、地方から介護人材が集まり、地方の人口流出は進み、是正をしようとしている東京一極集中に一層拍車がかかることも危惧されます。
そこで最近よく目にするのが「日本版CCRC構想」であります。この「CCRC」とは、もともと米国で「継続的なケア付き退職者コミュニティー」と呼ばれる共同体であり、日本版はそれにちなんで「健康なうちに地方のサービス付き高齢者向け住宅等に移り住み、地域社会で暮らし、最終的には医療、介護を受ける」という内容であります。いわば、中高年が自立して生活できるうちに入居し、経験を活かして若い世代とも交流する。介護や医療が必要になっても、利用料金は変わらないメリットがあり、現在米国では約2千ヶ所で75万人が生活されているようです。
また、日本創生会議は一方的に41の移住候補地を公表しましたが、「東京一極集中と地方の人口減少を同時に緩和できれば一石二鳥」との短絡的な発想もあります。いずれにしましても、適地とされた地域も人口減少に必死で取り組んでおられる地域も、目的は同じであります。地方への負担をこれ以上増やすことなく、また、利用者へのサービス低下もきたさず、さらには利用料、介護保険料のアップもないことを前提に、政府は新型交付金等の財政支援や地方創生特区を活用した規制緩和策を打ち出し、地方の私共と十分な協議をしていただくことを強く望みます。決して机上の論理を地方に丸投げすることなく、また地方創生が看板倒れとならないよう願うものであります。






