追い込まれた嘉田知事<下>
昨年十一月二十七日のびわこ宣言(日本未来の党の旗揚げ)から一か月余りが過ぎた今月四日、嘉田知事は県職員を前に「福島の人たちに寄り添おうと、『びわこ宣言』を発信したが、社会はまだまだ経済一辺倒。命の価値を無視した価値観で動いている」と年頭の訓示を述べた。それは、大衆への絶望感でもあった。【石川政実】
七日に開かれた連合滋賀の「新春の集い」でも、嘉田知事は、衆院選で落選した前議員らを前に、「私自身の 判断でご迷惑をおかけした。改めてお詫びしたい」と謝罪した。
「卒原発のためなら手段を選ばない」と小沢一郎氏と手を結んだ嘉田氏。一か八かの大勝負は凶と出た。
一時期、対話の会に所属していた木沢成人県議は「一人の政治家として決断したことについて、誰に詫びる必要があるのか。むしろ反省するとすれば自ら衆院選に出馬しなかったことと、未来の党の代表を降りたことだ。二足のわらじ批判に対しては、知事を辞めて今夏の参院選に出るべきである。そうでないと、全国を騒がせたこの一か月は何だったのかと、誹(そし)りを免れない」と指摘する。
かつて演歌歌手の都はるみは「普通のおばさんになりたい」と引退宣言を行った。はたして嘉田氏も「普通の知事」に戻れるのか。
平成十八年に奇跡的な初当選を果たした嘉田氏は、新幹線栗東新駅の中止、ダムの凍結・見直しなどに取り組み、マスコミの寵児(ちょうじ)になった。
さらに二期目は、舞台を関西広域連合に移し、橋下徹大阪市長らとともに国の出先機関改革、脱原発などの発言を強めていく。逆に県政課題への目配りが弱くなり、それが県市長会との対立として表面化していった。
一期目は既成概念の破壊、二期目は流域治水が目を引くものの、目立った成果はなく、残された任期(一年半)で何を残せるか。
自民党の有力県議は「知事の任期いっぱいの活動を容認する代わりに、三選の断念や、(次期県議選で邪魔になる)未来政治塾の解散を迫りたい」と言う。 それは嘉田氏が“死に体”になることだ。
●動く福井県知事
立地県である福井県の西川一誠知事は嘉田氏の惨敗をあざ笑うかのように八日、茂木敏充経産相と会談し、「安全な原発から疑義を晴らして稼働し、エネルギー問題に現実的に向き合うべき」と訴えた。
名誉挽回のために嘉田氏は再び、卒原発の旗を掲げ、山形県の吉村美栄子知事など全国首長らとスクラムを組んで、夏の参院選に出馬する可能性もある。
嘉田氏は十三日、同氏後援会の新年会で「小沢氏から、あなたが出てくれたら百人通る(当選する)と言われて、結党した」と“小沢恨み節”に終始した。 片や小沢氏は一切、釈明を行っていない。
「一粒の麦もし地に落ちて死なずば、ただ一つにてあらん。もし死なば多くの実を結ぶべし」(新約聖書ヨハネ伝)。嘉田氏には、一粒の麦で終わる政治家としての潔さが試されているのだ。







