県の放射性物質拡散予測の精度に疑問の声も
◇全県
嘉田由紀子知事はいまや「卒原発のジャンヌ・ダルク」と称されるほどの「時の人」だ。ひとたび福井県の原発で事故が起これば、近畿千四百万人の水源、琵琶湖が汚染されると全国に警鐘を鳴らす。その論理展開の根拠になっているのが、県の放射性物質拡散予測。しかし一部からは「科学的な精度が本当に高いものなのか」と疑問視する声が出ている。そこで県の拡散予測を検証してみた。 【石川政実】
光化学スモッグのモデルを使用
県は昨年十一月、福井県にある関西電力の美浜、大飯原発などで重大事故が起こった場合の放射性物質拡散予測を公表した。県琵琶湖環境科学研究センターが放射性物質(キセノン、ヨウ素)の放出量を福島第一原発事故並みに想定し、拡散シミュレーション(コンピュータでの模擬実験)を行ったもの。
美浜原発の場合、屋内退避が必要とされる甲状腺被ばく線量「一〇〇~五〇〇ミリシーベルト未満」が予想されるのは、高島、長浜両市の一部で、琵琶湖も一部入る(図参照)。
この拡散予測は、同環境科学センターが光化学スモッグを再現した大気シミュレーションモデルを使った。同モデルは、大気汚染物質(光化学オキシダント・窒素酸化物等)の動きをみるもので、国のSPEEDI(スピーディ=注)のように放射性物質が基本になっていない。
このため苦肉の策としてキセノン→一酸化炭素、ヨウ素→二酸化硫黄と、他の大気汚染物質に置き換えて拡散予測を行った。
知事と市町長が話し合う自治創造会議が四月十日に開催され、山仲善彰・野洲市長は「県の拡散予測モデルに再現性(予測の精度の高さ)はあるのか」とただしたところ、嘉田知事は「モデルは、あくまで仮のシミュレーション結果」と弁明し、精度の低いことを自ら認めた格好になった。
川端達夫・総務相も今月八日、民主党国会議員と嘉田知事との意見交換の中で、嘉田知事が福井県で原発事故があれば琵琶湖が汚染される可能性があると言及していることについて「科学的根拠に基づかないと風評被害を招くので、慎重であるべき」とくぎを刺した。
市民運動ネットワーク滋賀の池田進代表は「光化学スモッグ予測モデルで放射性物質を別の物質に置き換える場合、それが同じ結果を生むか、実測データで補正したうえで公表すべきだった」と指摘。
環境科学センターの山中直部門長は「大気汚染物質の再現性は確認している。放射性物質については、やはり国のSPEEDIとの比較が必要」としている。
県は国に対し、早急にSPEEDIによる精度の高い予測データを求めていくべきだ。
(注)SPEEDI=原発事故などの緊急事態で放射性物質の大気中濃度、被ばく線量などを迅速に予測するシステム。







