知らないからこそワクワク 河辺いきものの森・丸橋 裕一
◇東近江
ことしは、河辺いきものの森がオープンしてちょうど十年目を迎えます。これまで森には二十万三千人余りが来訪しましたが、私は十年前から、この森に子どもたちを迎え入れる上で大切にしてきたことがあります。それは、子どもたちが「楽しかった、また来るわ!」と言って帰ってくれるような活動をすることです。
楽しいからこそ何度も来る、何度も来るからこそ森の大切さがわかる、大切さがわかるからこそ森を守ろうという気持ちになる…そう思うのです。
子どもたちからの「楽しかった!」という一言を聞くために、私たちは十年の間にたくさんの工夫を重ね、その間にあったいろいろな出来事を、本紙の連載「いきものの森と子どもたち」で記してきました。
その連載「心に刻む活動」(昨年十月二十三日付)で、東近江市立八日市北小学校の四年生たちの活動を記しました。その四年生たちは年間十数回も森に訪れ、活動の集大成として三年生を森に招待し、四年生自らが考えたイベントを実施するのです。
ちょうど一月前、今年の四年生がそのイベントを行いました。その日、三年生のために四年生が準備したアトラクションはクイズラリーや竹工作など全部で十二にのぼります。
まずは四年生の代表が歓迎の挨拶をし、その後に十二のアトラクションごとに「宣伝」を行い、イベントがスタートしました。この日、三年生は「お客様」ですから、四年生は一生懸命もてなします。どのアトラクションも盛況で、あっという間に予定の二時間が終わってしまいました。今年のイベントも、一年間森で活動してきた四年生の成長ぶりが見事に発揮された、とても良い活動でした。
そのイベントの中で、とても感動した出来事がありました。それは四年生の代表が最初に行った歓迎の挨拶です。
このイベントで挨拶をする代表者は、前日準備の時に先生がみんなにこう伝えて決まりました。「明日のイベントでは、最初と最後の挨拶は代表の人にしてもらう。やってみようと思う人は、今日の昼休みに職員室に来なさい」そして二人の女の子が名乗り出て、それぞれが最初と最後の挨拶をすることになったのです。その最初の挨拶を担当した彼女が、三年生のために自分で考えた言葉は次のようなものでした。
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「三年生のみなさん、こんにちは!私たち四年生は、一年間この森でいろいろなことを学んできました。そしていろいろ知って、いっぱい笑って、いっぱい成長できたと思います。私はこの森でいろいろ知ることができ、とても強くなったと思います。なので、次、四年生になる三年生のみなさんに、この森のことを大好きになってほしいと思います。そしてまた次の四年生に教えてあげてください。いろんなこの森の良いところを…。
だから今日は、このイベントをみんなで笑って過ごしましょう。そしてこの森のことを大好きになって帰ってほしいと思います」
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私は子どもたちが「楽しかった!」と言ってくれる活動を心がけてきましたが、それはプロとしてこの仕事に携わる立場からの想いです。
それなのに四年生の彼女の言葉にも、「三年生に森の楽しさを伝えたい!」という気持ちが強く表れていたのです。そんな想いを子どもたちが自ら持ってくれたことに、私はとても感動しました。彼女たち自身が存分に森を楽しんだからこそ生まれた想いだと思います。
さて、みなさん、森は何がそんなに楽しいのでしょう?。こればかりは、文章で表現できません。森を歩いて、自らいろいろな発見をし、たくさんの体験をしてみないとわからないと思います。そして、一度だけでなく、細やかな季節の移ろいを感じられるほどに何度も森を訪ねると、より一層わかると思います。
森を楽しむためには、植物の知識が必要でしょうか?。あるいは昆虫や、野鳥の知識が必要でしょうか?大人の考えでは、「知識がある方が森を楽しめる」と思いがちです。しかし、それらは絶対に必要なものではありません。ほら、森にやってきた子どもたちを見てください。子どもたちはそんな知識がなくても、存分に森を楽しんでいるでしょう?。森のことを知っているから森を楽しめるのではなく、森には知らないことがたくさんあるからこそ誰もがワクワクするのです。
新しい年を迎え、今年は一週間に一度、あるいは一カ月に一度でも結構です。ご自分のペースで森を訪ねてみませんか?。もちろん、それは河辺いきものの森でなくても結構です。
ただ、少なくとも私はこの森以上に散策に適した森は知りません。それは、この森が平地であるということ以上に、地元・建部北町のみなさんに見守られて存在してきたことや、遊林会の方たちが十三年以上も保全し続けてきた森であること…つまり、今でも多くの人々に見守られ支えられている森だからです。
そんな森を歩きながら、全身でいろいろなことを感じとってみてください。季節の移ろいをテレビ番組やニュースで知るのではなく、ご自身の五感で感じてみませんか。森では楽しみを探し出そうとするのではなく、好奇心いっぱいの子どもの気分で、あるがままの発見に心を躍らせてみませんか。そして、木々や生き物たちと共に、時間を忘れて森にたたずんでみませんか。
きっと「森って楽しい!」ということの意味がわかると思います。
さあ、今年は森に出かけてみましょう!









