議論の場づくり求める声相次ぐ
◇東近江・蒲生
住民も地域医療を担う当事者である―。急激な医師不足により医療体制崩壊の危機に直面している東近江市が先月二十九日、「東近江市地域医療フォーラム」をあかね文化ホール大ホールで開いた。参加者約二百人のうち高齢者や団塊世代が大半を占め、問題意識とともに高い不安感も示した。
●崩壊の原因は?
二部構成のフォーラムでは、まず、地域医療問題に詳しい城西大学経営学部准教授の伊関友伸氏が「まちの病院がなくなる!?~地域医療の崩壊と再生~」と題して講演。
伊関氏は、医師不足の要因として国の抑制政策や劣悪な労働環境、新臨床研修制度、医療の高度・専門化、医術の不確実性に対する国民の不理解、医師の疲弊を無視した患者のコンビニ医療指向などを挙げ、医療技術向上に燃える若い医師を引き付け成長する病院と衰退の一途をたどる病院の二極化現象が起きていると指摘。
「自分のことしか考えない住民ばかりの土地からは、医師は立ち去り、建物と巨額の赤字だけが残る。地域医療崩壊の原因は住民の心の中にある」と警鐘を鳴らし、隣近所の人間関係の希薄化や高齢社会の到来といった住民の孤立と不安の増大が「過剰な医療資源の消費を呼ぶ」と分析。
●市民ができること
住民自ら病気や健康について学び、真に必要な病気だけ医療を受けるという知恵を身に付ける必要性を説き、介護施設不足により発生する社会的入院を減らすためにも福祉の充実を並行して取り組むよう促した。
何よりも「医師が勤務しやすい環境づくり」を地域医療保持の重点課題に掲げ、現場医師の話をよく聞きながら“地域で医師を育てる”という視点に立って「住民もすべて人任せにするのではなく、地域医療を担う当事者であるとの意識のもと、医療従事者と一緒になって考え議論する場づくり」の重要性を強調、地域医療再生を地域の民主主義再生とも位置付けた。
●将来のために
続くパネルディスカッションでは、東近江医師会会長・小鳥輝男氏をコーディネーターに、滋賀医科大学副学長・柏木厚典氏、東近江市病院事業管理者で市立能登川病院長・中條忍氏、市立蒲生病院長・加藤正人氏、市自治会連合会会長・今堀豊氏、蒲生地区まちづくり協議会会長・向井隆氏が意見を交わした。
西澤久夫市長が前回の説明会以後、明確に打ち出した“国立滋賀病院を含む中核病院の再編・統合”。東近江圏域の医療を守る観点から柏木氏は「ある程度の専門医師を集積し、機能を充実させた中核病院『(仮称)東近江総合医療センター』が必要で、地域一体となって取り組むことに独立行政法人国立病院機構からも基本同意を得ている。地域の中で(大学も)学閥を越え連携していくことを考えなければ、地域はよくならない」と協力態勢を鮮明にした。
●過程が知りたい
東近江地域の将来構想の一端に触れ、向井氏は「知らないうちに(構想が)できていることがうれしい半面、不安も募る。九月に示された提言の肉付けが今後行われると思うが、市民に情報を一早く公開する中で地域医療の当事者として同じ立場で考え、議論できる場づくりをしてほしい」と訴え、市立病院を抱える蒲生・能登川地区以外の地域住民との温度差を解消し関心を高める方策も求めた。
講師の伊関氏も「密室の中で強引に進めてはいけない。住民説明会を徹底的に実施するぐらいの覚悟で、議論する場を作るのが行政の責任でもある。結論ありきでなく、みなの思いをつなげていい地域づくりを実践することが大切だ」と助言。
来年から病院が維持できないのではないかとの思いすら抱く医療従事者と住民間の危機感のズレを痛感した中條氏は「スピード感を持って、積極的に情報公開し議論できる場づくりに努力していきたい」と語り、西澤市長も「病院を残すことは簡単だが、医師不足などで中身が整わない。この点も含め、急いで病院・地域医療の在り方に関する方向性を出し、みなさんともう一度話し合い、新しい医療政策を打ち立てていきたい」と力説した。







