3月8日 「町家落語会」日野観光協会でチケット発売中
◇東近江・日野町
スピードと効率を優先する現代社会で、自分の心と体に合った生活を手に入れるのは簡単なようで難しい―。アメリカ・マサチューセッツ州出身のモーア・オースティンさん(46)=日野町大窪=は、江戸時代末期に建てられた商家で自らの暮らしと生き方を見つけた。近江日野商人の歴史文化が息づく町並みの魅力を深く理解し、地元住民と守り伝えていく活動に取り組むモーアさんを取材した。
昭和五十九年に文部省主催の英語指導主事助手招致プログラムで来日して以来、今年で二十五年目を迎えるモーアさん。作務衣を着こなし、客人を抹茶でもてなす心遣いは、日本人でないことを忘れるほど行き届いている。
滋賀県へ移住したのは十七年前。自治体経営を担う人材育成を目的とした「全国市町村国際文化研修所」(大津市唐崎)の創設がきっかけで、現在は同研修所の研修副主幹兼教授。近江舞子の社宅から一軒家に引っ越そうと物件探しをしているとき、古民家専門の京都の不動産屋から日野町大窪の商家を紹介されたという。
「もともと古い家が好きで、使われている材料や職人の技術、庭が各部屋から見える独特の造り、家と一致した町並みに一目惚れし、すぐに『買わなきゃ』と思った」と、五年前を振り返る。
家の特徴を消さないちょっとした改善で、現代の生活習慣に合った古民家暮らしを妻・小松幸子さんと楽しむモーアさん。「家自体が骨董品。傷付くとなかなか癒えないのは人間の心とよく似ており、壊してしまうと二度と同じものは建てられない」と指摘し、「中心市街地には空き家が百軒以上あり、少し手を加えれば住めるような家もある。自然に崩れていくのを待つくらいなら、人に貸して家の寿命を延ばしてもらえば町並みも残っていく」と熱く語る。
町並みだけでなく「畑仕事などおじいちゃんやおばあちゃんに教えてもらうことが多く、周りの人たちは私にとって先生。平等に接してもらえるのが一番うれしい」と、モーアさんは温かい地元住民との交流にもまちの魅力を見い出す。
町外から来た者だからこそ感じるまちの良さや視点を生かしたいと、昨年九月に既存組織から生まれ変わった「日野まちなみ保全会」の事務局長を引き受けた。
再出発の第一弾企画として、三月八日午後二時から同町村井の西田邸で「近江日野 町家落語会」(入場料五百円で限定百人)を催す。大蔵省を定年後に落語家へ転身したモーアさんの友人も出演する予定で、歴史漂う町家の中で伝統芸を味わう初の試み。
国内外に情報アンテナを張り巡らせるモーアさんからは、ろうそくでライトアップした夜の庭めぐりや帰郷者の多いお盆前後を歴史保全週間として講演会・体験活動・特別公開の実施、専門家から教わる古民家の貸し借り講座(五、六月頃に開催予定)、子どもたちへの伝承などアイデアが次々と湧き出てきて、同会メンバーも刺激を受けている。
記者の目
「デメリットを気にしすぎて、何もしないことがまちにとって本当にいいことなのか」。真剣にまちのことを思い行動するモーアさんのような人材こそが、将来にわたって日野町の財産となるにちがいない。(櫻井順子)






