東近江市内の活動団体
◇東近江
地域の伝統文化や自然、科学に興味を持つ子供たちを指導し、人を育てる大人の組織が東近江市内で活動している。これまで少年野球をはじめとするスポーツ面の活動は古くからあったが、運動以外の分野での活動は余りなかった。その中から西堀榮三郎記念探検の殿堂無線倶楽部、蒲生野考現倶楽部、八日市大凧保存会、南部地区まちづくり協議会の取り組みを紹介します。活動を通じて子どもに何を伝えようとしているのでしょうか。
西堀榮三郎記念探検の殿堂無線倶楽部 科学と冒険の楽しさ
私たち西堀榮三郎記念探検の殿堂無線倶楽部(以下、無線倶楽部)の活動を支えるキーワードは「好奇心」と「チャレンジ精神」です。私たち日本人はこの好奇心とチャレンジ精神をその国民性の中につちかい、育まれ、戦後の飛躍的な経済成長を成し遂げました。
しかし、最近では子ども達の科学離れ、理科離れが年々進み、このままでは科学技術立国日本の礎が崩れていくのではないかという危機感さえ漂うようになりました。
このような時代にあって、無線倶楽部は、昨年、東近江地域唯一の科学館である西堀榮三郎記念探検の殿堂を活動の拠点として生まれました。その活動のテーマは、地域の子ども達の科学する目を養い、将来の日本を託す子ども達を輩出することにあります。
かつて倶楽部員が少年時代に、好奇心とチャレンジ精神を刺激されたアマチュア無線と、その周辺技術は、今も子ども達の科学する心を育てる様々な可能性を持つ貴重なツールです。メンバーの多くは、自らの手でコイルを巻き、自作の真空管式無線機と、針金アンテナで北海道や九州、海外と無線交信した感激を体験しています。
南極探検に通じる、未知のものに対する好奇心、チャレンジ精神は私たちの活動そのものであり、昨年は、探検の殿堂の前にある池を取り巻くように針金アンテナを張り巡らし、南極昭和基地からの無線電波をキャッチし、この感激を子ども達に体感してもらいました。この東近江地域に東近江ゆかりの科学者である西堀榮三郎を記念して設立された探検の殿堂と、私たち無線倶楽部は相互の運営活動の相乗効果を輝かせ、地域の子ども達の「好奇心」と「チャレンジ精神」を刺激し、次の世代を担う人材輩出に地域から貢献して行きたいと思っております。
西堀榮三郎記念探検の殿堂無線倶楽部 会長・植木誠男
八日市大凧保存会 チャレンジ精神と伝統
滋賀県東近江市の地域文化で、国の無形民俗文化財にも選択されている「八日市大凧」の製作及び飛揚技術を、子ども達に伝授するプロジェクトとして「チャレンジ“大凧”2020」を二○○七年(平成十九年度)より開催しています。
このプロジェクトは、東近江市内の小学五、六年生にスポットを当てて、この地域の先人が伝えてきた大凧の秘伝をじっくりと細かく、製作作業の始まりから大凧飛揚の感激に至るまでを知ってもらい、地域文化の担い手となってもらえることを夢見て企画いたしました。
参加してくれた子ども達は、大凧保存会の指導のもと八畳敷きの大凧を、大人の人達が作るのと同じように、きっちりひとつひとつの作業を進めていき、伝統という言葉などとは関係なく、大凧の様々な仕組みや工夫に興味を持って吸収していってくれました。
立派に大凧は完成し、クライマックスはこの大凧をみんなで揚げることです。二○○八年(平成二十年度)は、静岡県浜松市で開催された国際凧揚げ大会で飛揚しました。自分たちのまちの文化財で、自分たちが作った大凧が大空を舞う姿は、間違いなく子ども達の目に焼き付いたことだと信じています。
小学生の今は「地域文化」や「伝統」の意味がよく解らなくとも、そのものに触れることや感じることが重要であり、結果として必ず伝統というものに対する驚きや発見・感動が生まれてくると思っています。
子ども達に大凧を継承し、より活性化させていくことにより、西暦二○二○年には八日市大凧がユネスコの「世界無形文化遺産」に登録されるよう東近江市民と共にチャレンジしていきたいと思っております。
二○○八年「チャレンジ“大凧”2020」参加メンバー 黄地悠貴、小梶洋平、西村沙恵、寺田唯香、三原麻由、山川武聖、角田恵(以上八日市南小)西川智也(蒲生東小)柴田くるみ、横山里奈(以上蒲生西小)
八日市大凧保存会 中村 章
南部地区まちづくり協議会 郷土の文化と愛着
伝統文化子ども教室は、伝統文化のあまりない南部地区の子どもたちに江州音頭や伝統芸能・むかし遊びに接してもらい、異年齢の仲間づくりや世代間交流を深めようと平成十九年から実施しています。
伝統文化を次の世代に伝え残していくには、子どもの頃から身近に体験していくことが大切だと思っています。しかし、社会や生活様式の変化により、体験できる機会がほとんどなくなってきています。
教室を始めたきっかけは、南部地区まちづくり協議会が『子どもにとって南部地区がふるさとです。親子で思い出作りをしましょう』をキャッチフレーズに平成十八年から復活させた「南部地区盆踊り大会」にもあります。盆踊りの輪に参加できない子どもを見て、まちづくり協議会の事業として、子ども向けに江州音頭の教室をできないものかと思いました。まち協のメンバーに江州音頭の指導者がいたのも教室の運営をスムーズにしています。
教室開催以降、教室参加者が南部地区盆踊り大会や聖徳まつり、地域の盆踊りに参加し、地域からも大いに喜ばれています。教室に参加した子どもたちは、年齢の違う友達ができ、また両親・知り合いなどと一緒におまつりに参加することで、地域全体の交流が深まったように感じます。参加者の中からは、江州音頭の唄の教室に参加する子どももあり、昨夏には、各地で音頭とりを披露し、こちらも大いに喜ばれています。
江州音頭だけでなく、銭太鼓や竹細工を年齢の離れた指導者やまち協スタッフと一緒になって体験することも核家族の多いこの地域の子どもにとってはよい経験になっていると思います。
今後もこの教室を通して、地域に愛着を持った子どもの輪が広がっていけばいいと思っています。
南部地区まちづくり協議会会長・廣瀬正明
蒲生野考現倶楽部 「ふるさと」を語れる子ども
東近江大塚町と近江八幡沖島町で、地元の古老に五十年ほど前の話を聞いて絵にする「ふるさと絵図」づくりに取り組んでいます。
私たちの暮らしや地域の環境が大きく変わる前の地域の姿を文や絵に表現して後世に残す活動で、県立大学の上田洋平先生の指導を受けて進めています。
大塚地域では、「赤タスキをして、朝一斉に田植えをした。キリッとしてたよ」、「ホタルの乱舞はすごかった。環境が良かったね。」、「茅野輪を蛇にして村の若衆がそれを持って池を泳いで弁天様に掛けてお願い事したな」。
沖島地域では、「毎日シジミを採って浜で煮炊きしたね。ぎょうさん採れたわ」、「切り出した石を丸子船に乗せて大津まで運んだよ」、「昔の魚はもっと良い顔しとったで」。
お年寄りの脳裏に刻まれた当時の様子を聞いていると、厳しい暮らしの中にも豊かな自然観や生活の随所に暮らしの知恵が生かされていた様子が伝わってきます。沖島での聞き手は大学生八人に加え、夏には子ども五人が参加しました。
この子ども達は、「日野川源流探検」や「かいどり大作戦」などの自然体験活動に毎年参加しているので、どこにどんな魚がいるのか、魚の種類の変化などをよく知っています。そして、体験したことと古老の話とを関連づけながら地域を総合的に捉えようとします。回を重ねる度に地域を豊かな言葉で語ることができ、その場への愛着心が深まります。愛着心はやがて「心のふるさと」へと昇華していくのでしょう。
蒲生野考現倶楽部総合 プロデューサー 井阪尚司








