無限の可能性「大林式工法」
◇東近江・安土町
最大角度七十三度、ほぼ垂直の壁に芝生が育っている。しかも、甲子園球場のグランドがすっぽり入るほどの大きさのドーム屋根の上部から地面までが緑の草原状態。急勾配の屋根にどのようにして芝生を植えるのか。世界初の技術「大林式工法」の真骨頂だ。
土を吹き付けた植栽では、雨で土が流れ、農薬や肥料が土壌や水源を汚染する。ところが土の代わりに「Eソイル」を六センチ程の厚さで吹き付けると、繊維同士が電気的にからまりあい、雨や風にもびくともしない“土壌”ができ上がる。
毛管現象の力を利用した保水力や保肥力に富み、根ぐされや害虫被害の心配もない。ほとんどノーメンテ(粗放)、水使用量抑制も喜ばれる。そして何より、炭素ガスを吸って酸素を出してくれる。
外気が大きく変化しても、芝生のおかげでドーム内の温度はあまり変化しない。冷暖房機代一億二千万円、年間電気代二千四百万円が不要となった。
最近は、垂直の壁への施工にも成功し、今後、新たな需要が見込める。実際、高い透水性や、踏んでも固まらない気層性、軽くても飛ばない、殺菌性など「Eソイル」の特性を生かし、土に混ぜたり芝生を植えるなどして、運動場、競馬場、空港(融雪剤対策)、畑(連作障害無し、糖度向上)、屋上菜園、塩害や強風対策など、様々な場所で活用されている。
大林さんからは、次々と新しいアイデアが吹き出してくる。「瓦に直接芝生を植えれば、二階が涼しくなって、二世帯家族などは喜んでくれるんじゃないかな」と、エコスタイル志向層はじめ、一般家庭への普及も視野に入れている。
原料となるスギ・ヒノキの樹皮は、産地で集積され、焼却炉に運搬して、焼却するシステムができていて、焼却前に引き取る。焼却用の燃料も使わなくて済み、林業と農業の連携の可能性も秘めている。
常識をうのみにせず、発想を転換することで常に新たな価値を模索する生き方が、大林さんの若々しさを創出しているのだろう。
スギ、ヒノキの樹皮から 驚きの天然パワー
ビーンズドームで実証
ビーンズドーム
阪神淡路大震災を経験した兵庫県が、三木市の広大な丘陵地に整備している県立三木総合防災公園内に建設され、平成十九年十一月にオープンした。
内部に屋根を支える柱がなく、テニスコート九面をステンレス製のドームで覆うだけだが、震度7級の地震にも耐える。
普段は国際試合も開く屋内テニス場だが、緊急・災害時には救援活動の拠点施設となる。
外壁面の緑化によりドーム内の温度が保たれるため冷暖房器機は設置されておらず、電気が遮断されても暑さや寒さをしのぐことができる。
オープンから二回目の冬を迎える。急斜面に芝生と野草(郷土植物)が共生。虫や野鳥がやって来て、ふんといっしょに種を落としてくれる。花の季節には可憐な花がドームの周りを彩る。
株式会社 大林環境技術研究所
代表取締役 大林久さん(70)
「変わってると言われるが、正当を見ている」
製薬会社で農薬研究をしている時に出会ったレイチェル・カーソンの「沈黙の春」に触発され、定年を前に退社、独立。腐らないため焼却処分され、それまで誰にも見向きもされなかったスギやヒノキの樹皮のもつ殺菌性や殺虫性などの天然特性に着目した土壌改良材「Eソイル」を独自に開発し、生まれ育った安土町に拠点を置いて、環境にやさしい「大林式工法」を全国で展開している。種無しブドウの開発者であり、滋賀県硬式テニス界では現役プレーヤーとして活躍。「変わってると言われるが、正当を見ている」と自負する。これまでに、環境大臣賞(平成二十年度)をはじめ、近畿経済産業局長賞(平成十九年度)、滋賀LOHAS大賞、環境優良賞(日立環境財団)、ニッポン新事業創出大賞優秀賞など多数受賞。








