百貨店王・中江冨十郎邸 蘇生プロジェクトで保存修理
◇東近江・五個荘 保存修理が行なわれていた近江商人の本宅・旧中江邸(東近江市五個荘金堂町)がこのほど、まちづくり活動の拠点となる「金堂まちなみ保存交流館」として開館した。運営主体は、地元住民らでつくるNPO金堂まちなみ保存会(西村實理事長)。全国には八十カ所の国重要伝統的建造物群保存地区があるが、地元保存会が運営するのは大変珍しく、全国の関係者らから注目を集めている。 旧中江家住宅は、大陸の百貨店王と称され、戦前の朝鮮・中国に二十店舗もの三中井(みなかい)百貨店を築いた中江四兄弟の三男・冨十郎が住んでいた屋敷で、その孫に当たる一夫氏が所有していたが、昭和五十年頃から無住となり、売却の意向を示していた。 家人も思い悩んでの決断だったが、地域にとっても思い出深い屋敷であり、金堂町と町並保存会(同NPOの前身)が「景観保全のために」と、当時の五個荘町に保存を要望し、その結果、建物は中江氏が寄付、土地は同町が購入。合併後、伝建事業として東近江市が引き継ぎ、五年にわたる保存修理が行われてきた。 しかし、市の財政は厳しく、管理運営を地元でお願いできないか―と相談が寄せられ、同住宅を地区の交流館にする「近江商人屋敷蘇生プロジェクト」がスタートした。さっそく、運営のための準備会とまちづくり研究が行われ、目指す交流館を▽住民にとって「生きがい」の場▽近江商人の心髄「おもてなし」の場▽老若男女の「学び」の場―と位置づけ、実践のための組織強化としてNPOに発展させた。 当時を振り返る西村会長は「これは正直、大変だと思いました。保存会は自治会の一組織で、収益はほんの少しだけ。しかし、他の伝建地区に行かれた方はお気づきと思いますが、金堂には町並み保存の紹介や湯茶のもてなし施設がない。こうした活動拠点を持つことは発足当初からの夢だったんです」と話し、当時の壁色に復元された室内を感慨深く見渡した。 交流館は、観光客の休憩場所や物産販売、観光案内をはじめ、会議や自治会の催し等に解放するほか、伝建保存事業にかかる現状変更の事前相談など、修理・修景に関する市の相談窓口も開設(月・火曜日の午前九時~午後四時)される。設計工事費総額は約七千万円。延べ床面積約四百三十二平方メートル。






