大津地裁「周到で巧妙、常習的で相当な悪質性」
【全県】 一部既報の通り、虚偽の領収書を添付して政務活動費(政活費)約580万円をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた元県議の大野和三郎被告の判決公判が先月28日、大津地裁であり、谷口真紀裁判官は懲役1年6か月、執行猶予5年の判決を言い渡した。
量刑理由では「収支報告書に添付された虚偽の領収書は89枚にのぼり、周到に計画され、巧妙かつ狡猾で、長期にわたって繰り返された常習的な犯行の悪質性は相当に高い」と批判した。その一方で、詐取分を返還し、今後は政治活動をしない意向を示しているとして、執行猶予を付けた。
判決などによると、大野被告は2017年~22年度、勤務実体のない長女を調査業務補助員として給与などを支払っているように装ったり、県政報告(自民党会派統一広報紙)の発行費を水増しした領収書を印刷会社に発行させたりして計580万円をだまし取った。
●不正請求を大胆推理
本紙は22年2月10日付で大野元県議の法外な政活費支出問題を初めて報じたが、同年10月にその謎を大胆な推論で解き明かしたのが共産党県議団だった。19年1月15日付の大野元県議の県政報告の発行費用(政活費)は102万円だったが、同時期に同じ印刷会社(彦根市)で印刷された西村久子元県議の県政報告の発行費用の実に2倍であることを調べた。
自民党県議団の会派ルールでは、県政報告の発行費用を同県議団と県議個人が折半で支出することができる。
大野元県議の収支報告書に添付されている証拠書類は、会派負担分が金融機関の振込金受領書、同元県議の個人負担分が印刷会社からの領収書である。
このため共産党県議団は、自民会派から振り込まれた金額に対し印刷会社から領収書が発行され、それが大野元県議個人負担の証拠書類になっているのではないか、つまり“二重請求疑惑”を突き止めたのだ。さらに同党県議団は22年12月、県警でなく大津地検に詐欺罪で刑事告発する。昨年10月、大津地検は詐欺罪で在宅起訴した。
当時、共産党議員団の杉本敏隆元県議は「彼の『犯行は常習的』で、問題は最近6年間でとどまらないことだ。大野元県議が県会議員になったのは14年前である。政活費詐取は毎年170万円を超えており、立件されていない時期の政活費詐取は巨額になるはずだ。詐欺罪の時効は7年だが、『県民の財産を詐取した分は全額返金すべき』という道義的責任に時効はない」と語る。
注目浴びる来夏の彦根市・犬上郡選挙区県議補選
自民党有力県議は「大津地裁は、執行猶予の理由の一つに『(本人は)今後は政治活動をしない意向』を挙げた。例え執行猶予期間中でも選挙に出ることは可能だが、彼は出ないはず。だが来夏は知事選と彦根市・犬上郡、守山市の2選挙区で県議補選(各欠員1)がある。もし彦根市・犬上郡選挙区で各会派(党)の候補者擁立が難航したら、どうなるかだ」と指摘する。
「大野さんに頼まれた件はどうなった」。大野元県議が県議辞職した昨年11月以降も、ある県議は県執行部に圧力をかけている、という噂が出回った。大野元県議の存在感は、いまも県庁に強く残っているのだ。 (石川政実)
県議会各会派代表のコメント
自民党県議団の奥村芳正代表「かつて自民党県議団に所属していた議員が倫理観にかけた行為をして、県議会や議員に対する信頼を裏切ったことはきわめて遺憾であり、真摯に受け止めると同時に、このような事態が二度と起こらないよう再発防止策に努め、自らも襟を正していきたい」
チームしが県議団の今江政彦代表「県当局に対する不当要求で政治倫理審査会を設置して審査した結果、本人が本会議において謝罪したことに加え、今回政務活動費の詐取容疑で有罪判決を受けたことは、県議会に対する県民の信頼を失うもので、まことに残念だ。県議会も再発防止に努めていく」
さざなみ倶楽部の清水鉄次代表「議員による政務活動費の詐取はあってはならない。そういう意味でも妥当な判決だと思う。我々は県民のためを考えることが第一目的で活動しなければならず、二度と県議会議員から起こってはならない。(大野元県議には)厳しく受け止めてほしい」
滋賀維新の会の河村浩史代表「会派と議員個人に分けて支給されている県議会の政務活動費の仕組みにも課題があるのではないか。今回の裁判は元議員個人の問題ではなく、議員全体に対する不信感につながる。県民が納得できる支出をしているか、議員それぞれが襟を正さねばならない」
公明党滋賀県議団の清水ひとみ代表「(大野元県議)本人も起訴内容を全部認めているが、しっかりこの判決を受け止め、真摯に反省してほしい。県議会議員一人ひとりがもう一度、政務活動費は県民からの税金が原資で、それで活動させてもらっていることを肝に銘じなければならない」
共産党県議団の節木三千代団長「犯罪の舞台は大野元県議の政活費だけでなく、自民党県議団への政活費であり、同党発行の『県政報告』だ。共産党県議団は刑事告発と同日、自民党県議団に大野元県議の疑惑調査と政活費の不適切支出是正を申し入れたが、自民党は何の対策もとらず責任は重大だ」
(石川政実、羽原仁志)






