詐欺罪でつまずいた大野元県議の軌跡 (上)その後は、真逆の「我が人生」
【全県】 前日は一睡もできなかった記者の目には、県庁は不気味なほど静まり返っているように見えた。これは、本紙が2022年2月10日付ではじめて、大野和三郎元県議(69)=豊郷町=の法外な政務活動費支出を報じた日だった。さらに第2弾として同年3月17日付で、大野元県議が全国農業共同組合連合会滋賀県本部(JA全農しが)と特定業者との取引に対し、県にJA全農しが側へ見直しを求めるように迫り県の予算を人質にしようとした問題を報じた。それは県庁で権勢を誇った大野元県議を追う長い取材のはじまりでもあった。(石川政実)
政務活動費約580万円をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた大野被告の判決公判が先月28日、大津地裁であり、谷口真紀裁判官は懲役1年6か月、執行猶予5年を言い渡した。この大野元県議には、県の畜産行政に圧力をかける別の顔もあった。
当時、県議会の議会運営委員長だった大野元県議は19年に代表役員が恐喝未遂容疑で逮捕された企業組合堀川食品を問題視して、21年11月から12月にかけて、JA全農しがと食肉卸業の堀川食品との取り引きについて県の指導でJA側に見直しをさせるよう求めた。(しかし代表役員は22年1月に無罪となる)
大野元県議は21年11月19日、県農政水産部長らとの面談で「きちんとケジメをつけておかないと農水にかかる予算はペケ」と威圧的な言動を続けた。また別の面談では県幹部に「どあほ」「帰れ」を繰り返した。
●突っぱねた知事
同年12月21日、大野元県議と有村国俊県議(当時、自民党県議団政調会長)は三日月大造知事と面談して堀川食品の排除を要請したが、三日月知事は「JA全農の問題は民と民との契約関係である。予算を人質にしたような対応は違うのではないか。JAへの要請事項と予算案は切り離して考えており、県として予算案を議会にお諮りする」と土壇場で突っぱねた。県は民間の取引に介入する愚をおかさずに済んだのだ。
●ホルモンの巨大利権
ちなみに、JA全農しがから出荷された牛は、県内唯一のと畜場である滋賀食肉センターで、(株)滋賀食肉市場がと畜解体し、その牛枝肉を全農栗東工場で(株)OSが各部位に加工する一方、全農の出荷分の牛内臓(ホルモン)は県副生物協同組合が処理したホルモンを堀川食品が一手に引き受けて販売している。
これは、食肉関係業者にとっては、よだれが出るほどの巨大な利権でもあるのた。
●23年2月県会で陳謝
大野元県議の県職員に対する高圧的な言動や不当要求に対し県議会は22年5月、政治倫理審査会(政倫審)を設置した。
同年12月27日、政倫審の真山達志委員長は、当時の岩佐弘明県議会議長に対し大野元県議に文書警告や県議会での陳謝などを求める報告書を提出した。
岩佐議長は、これを受け大野元県議に県議会での陳謝を要求した。
大野元県議は23年2月、県議会2月定例会初日の本会議で「二度と同様の行為を繰り返さない」と陳謝した。
杉本敏隆元県議は「大野元県議の暴言の背景には自己の地位と権限を利用して、堀川食品の排除を県と全農に求めることによる、私的利益の追求があった」と指摘する。
●強権的手法が力の源泉
11年の統一地方選挙で県議会議員に初当選した大野元県議がわずか14年で“県庁の影の支配者”とまで恐れられる存在になったのはなぜか。理由として・県職員に「どあほ」などの暴言を吐き、メールも交えて執拗に繰り返すことで恐怖感を抱かす強権的手法・初当選の11年度から24年度11月まで、総務企画常任委員会(名称が3回ほど変更)にずっと所属し、県予算と人事に目を光らせた・行財政改革を旗印に行政の弱みを徹底的につく―ことなどが挙げられる。
●経済合理性を武器に
豊郷小学校校舎保存問題など、数々の修羅場をくぐりぬけてきた大野元県議にはある種の凄みがあり、それが県職員や県議らをたじろがせた。また県の人事に目を光らすことで、尻尾を振る職員も現れた。さらに豊郷町長時代の経験から県行政のツボを決して外さなかった。そこには経済合理性があった。この時に使う常套句は「地方公共団体は、最小の経費で最大の効果を挙げることだろ!」(地方自治法第2条14項)であり、この啖呵(たんか)に国からきた部長らもタジタジとなった。
05年11月、全国町村会の機関紙「町村週報」に、大野元県議は滋賀県町村会長(豊郷町長)として寄稿した随想「半世紀の我が人生、振り返りて今思う」の中で、「『自分に嘘をつかない、自分の気持ちに正直に生きる』、この姿勢だけは貫き通し」と強い信念を述べていたが、この言葉とは真逆の、その後の人生になった。







