国政刻刻 東近江市の「森の文化博物館構想」に期待
滋賀県は、東西南北の周囲を1000メートル級の山やまに囲まれ真ん中に深い湖、琵琶湖をかかえた盆地です。1980年代に私自身、琵琶湖博物館を構想した時、この琵琶湖盆地には、数百万年の動植物の自然史、数万年の人の暮らしの文化史、そして数十年の環境共存の歴史が生きて積み重なっている人類進化の展覧会場と提案しました。当時「環境汚染」ばかりが強調されていた琵琶湖ですが、琵琶湖博物館のおかげで、今やその自然史、文化史の価値を子どもたちからお年寄りまで、県内外の皆さんが評価してくれています。
周囲の山やまから琵琶湖に注ぐ100本を超える一級河川の流域毎に、その自然と文化の進化の秘密が隠されています。その象徴が愛知川流域です。鈴鹿の山に降った一滴の雨水が森を下り、山あいの沢となり最後に愛知川の大河となって琵琶湖に注ぐ。
この愛知川流域の森林文化の日本史的価値を表現するのが、木地師文化でしょう。今、能登半島地震で話題となっている輪島塗など、日本のお椀やお盆文化の源をつくり全国に広めたのが木地師です。トチ・ブナ・ケヤキなど広葉樹の巨木を、轆轤(ろくろ)技術で広めたのが木地師で、平安時代に奥永源寺に住み着いた惟蕎(これたか)親王が発明したといわれています。
東近江市は昨年には「東近江市博物館構想」を策定し、愛知川流域の水の流れにそって生まれた歴史と文化、特に木地師文化を柱に「森の文化博物館」を提案しています。木地師文化が鈴鹿の山から日本全国へ伝播していったように、東近江市から「森の文化」「木の文化」の価値と重要性を全国、世界に発信していくことを目指しているということです。
地元での「森の文化博物館に行きたいか」という調査では「行きたい」と答えた人が6割を超えており、「自然の中でゆったり過ごせる」「自然を観察する」などエコツーリズムの拠点機能に多くの人が期待しています。地域全体を一つの博物館として捉えるフィールドミュージアムの発想ですが、人と自然の共生が地球規模で問題となっている今だからこそ、東近江市の「森の文化博物館」づくりに大いに期待をしたいです。






