国政刻刻 「数値目標ありき」ではなく ― 「防衛費2%論」について
ロシアのウクライナ侵略をはじめとする国際情勢と日本を取り巻く安全保障環境の変化を考えれば、防衛力の強化・充実は必要です。しかし、防衛力の整備は、金額的な数値目標が先にあって、そこに向かってとにかく買い足していくというような雑なやり方をしてはなりません。
NATO(北大西洋条約機構)諸国が軍事費を対GDP比2%以上にするとの目標を掲げたことに刺激されてか、日本にもそれに同調する意見が多くみられます。
「2%」といっても、防衛費が5兆円から10兆円になるという話。その5兆円をどこから捻出するのか。それを何に使うのか。そこが明確にならないままに、先に数値目標だけを持ってくるのは乱暴すぎます。NATO諸国でGDPが日本を超える国はなく、やみくもにNATOに準じる必要はありません。
武力の行使は抑制的であらねばならず、かつ、必要最小限でなければなりません。これが憲法の要請であり、戦後一貫した日本の防衛政策の基本的な考え方です。
何が必要最小限かは、周辺の安全保障環境や軍事・科学技術の進展状況などを総合的に考えて決めていく必要があります。この基本線は今後も崩してはなりません。この手順をあっさりと省略して「金額ありき」というやり方は、日本の防衛力整備のあり方としてふさわしくありません。
「ウクライナは明日の日本だ」と危機感をあおる声があります。しかし、こういう状況だからこそ冷静・緻密な議論を行い、安全保障の全体像を考えることが重要です。「いざ戦わば」みたいな勇ましい話ばかりだと、「木を見て森を見ない」議論となり、全体像を見失いがちになるからです。
戦争に勝つという前に、戦争を起こさせないようにすることが第一。防衛力はそのための重要な要素の1つであることは間違いないものの、すべてではありません。
外交や経済安全保障、日米同盟の深化と多国間の安全保障協力など重層的な総合安全保障によって戦いを未然に防いでいく努力を軽んじてはならないと考えます。






