「ステージパパ、レオポルトの本音」アンナ・マリアとの結婚(4)
――トゥーン家から宮廷オーケストラに移られていますが、仕事内容に変化はあったのですか。
レオポルト いいえ、仕事に関してはそんなに大きな変化はなかったですね。ただ席次は四番目ですから、出世の見込みという点では、あまり期待できないとは覚悟していました。それでも、今までに比べたらオーケストラも大所帯ですし、やはり、やり甲斐は感じていました。
――どんな日常なんですか。
レオポルト いや、かなり単調な日々ですよ。大雑把にいうと、こんな感じです。宮廷への出勤。着替え、指定の座席への着席。日々の演奏。楽器の掃除、片付け。帰宅。
――宮廷楽団に移籍された時は、おいくつだったんですか。
レオポルト 24歳です。前途洋々とは行きませんが、それでも精一杯努力して、いつかはもっと上の暮らしができるようになるんだという、飢えに似た感情はいつもありました。自己研さんはおさおさ怠らず、作曲も暇を見つけてはやっていました。
――そして、結婚という転機が訪れたのですね。
レオポルト アンナ・マリアとの結婚は今から思うと、ある意味、大きな転機でした。それまでは、何が何でも世の中を見返してやるんだと「怒りの感情」が 生きる原動力でしたが、結婚を機に、そんな「がちがち」に構えて生きていく姿勢が、馬鹿馬鹿しく見えてきました。それに、アンナ・マリアは私の中の女性観を変えてしまいました。何しろ、私の母が強烈な女性でしたから、正直なところ、女性忌避する気持ちが強かったのですが、アンナ・マリアは母子家庭という逆境にもかかわらず、気性が温和で、とびきり明るかったのです。
――奥様は、母子家庭だったのですね。
レオポルト はい。父親は法律家で、宮廷御料局書記官を務め、最後はザンクト・ギルゲンで管理官をやっていましたが、50代で他界。音楽好きの方だと聞いています。父親が亡くなってから、その後の生活はおそらくかなり大変だったと思います。
――いつの時代も母子家庭では経済的に安定しませんからね。でも、奥様のお父様が、モーツァルトの音楽的才能に、何らかの影響を与えた可能性がありますね。次回はまた、その辺のお話を聞かせてください。よろしくお願いいたします。
(基礎資料 石井宏著『レオポルトの青春』)






