「ステージパパ、レオポルトの本音」夢の崩壊(3)
――苦労の甲斐があってザルツブルクに出てこられましたが、学校を中退されていますね。どうされたんですか。
レオポルト いや、困りましたね。そのお話だけは、勘弁願えませんか。実は、私の人生の中でも、最も、語りたくない部分なんです。正直いうと、出席不足だったんです。
――それにしても、母親との縁を切ってまでザルツブルクに出てこられて、その挙句が、出席不足による放校処分とは、ショックが大きかったんではないですか。
レオポルト 絶望しました。「人生の失敗者」だと、立ち直れないほど、落ち込みました。でも、アウグスブルクに帰るわけにもいかず、このままぶらぶらしていても、仕方ないので、幸い空きの出たある伯爵家の従僕の仕事に応募させていただき、これまた運よく、採用していただきました。何とか食いぶちは手に入れることができたわけです。もっとも、従僕といっても、バイオリンが得意でしたから、楽士たちの取りまとめなどの仕事などもその中に入っていました。身分は低いですが、それでも好きな音楽に関われる仕事でしたから、それほど苦にはならなかったですね。
――では、何とか立ち直れたのですね。
レオポルト はい。まあ、神父になるという最初の夢は、木っ端みじんに壊れてしまいましたが、それはどちらかというと、押しつけられた夢だったので、諦めもつきました。ただ、この失意は、自分の中に、「この世を、いつか絶対、見返してやる」という抜き差しがたい感情を植え付けました。この世でのし上がるには、この不合理な世の中を我慢して、腹を立てず、目上の人には従順であることが何より大事。そのことが、骨身に染みて分りました。ただ、私の中には、相反する感情が、いつも渦を巻いていました。身分を頼りに、努力しないやつらが、許せないのです。貴族、僧侶など、既得権益の上にぬくぬく寝そべって高慢な連中が自分に命令するこの現実。それに従わざるを得ない屈辱。音楽だけが、そのささくれ立った感情を癒してくれました。
――それは、大変な日々でしたね。では、次回は、ザルツブルクでの楽士生活を聞かせてください。
(基礎資料 石井宏著『レオポルトの青春』)






