参議院議員 林 久美子
昨年から私が取り組んでいる課題に「無戸籍問題」があります。いよいよ今国会中に、超党派の議員連盟を立ち上げることになりました。
さて、皆さんは「無戸籍問題」を御存知でしょうか。驚かれるかもしれませんが、法治国家日本において、戸籍のない方々が存在するという現実があるのです。戸籍がないとどのような問題があるのか…。まず基本的には戸籍がないと住民登録ができませんので、住民票がありません。国民健康保険への加入もできません。子どもが学校に通う年齢になっても就学通知が届きません。もちろん参政権の行使はできませんし、運転免許や国家資格を取得できません。結婚したくても婚姻届も受理されません。パスポートも発給されませんし、住宅の賃貸契約を結ぶなど契約行為もできません。では、なぜ、こうした「無戸籍」の方が存在するのか。その多くは民法七七二条によるものです。七七二条はいわゆる嫡出推定の条文で、離婚後三〇〇日以内に生まれた子どもは前の夫の子どもとみなす、という内容です。七七二条に関して無戸籍となってしまうケースの多くは、ドメスティック・バイオレンス、いわゆるDVによって夫のもとから命からがら逃げ出して、なかなか離婚が成立せず、その間にパートナーに出会い、子どもを授かった、というものです。そのため、離婚成立から三〇〇日以内に出産することになり、戸籍上、前夫の子どもとしたくないため出生届を出さず、子どもが無戸籍になってしまうのです。そして、すでに無戸籍のまま成人している方も多くいらっしゃいます。
先日、三〇代の無戸籍の女性にお会いし、お話を伺いました。彼女も民法七七二条関係で無戸籍状態が続いていました。彼女のお母様は、夫のDVを受けて逃げ出し、その後、彼女の父親と知り合って、彼女を授かったのだそうです。しかしDVをする元夫が怖くて、お母様は離婚の話し合いをすることもできませんでした。その結果、彼女の出生届は提出されず、戸籍はなく、法的には「存在しない人間」としての人生を歩まざるをえなくなったそうです。小学校にも中学校にも、もちろん高校にも行ったことがない彼女。「学校という場所がどういう所なのか、想像もつきません」。彼女は言います。「今も生まれ落ちた感じがしない」と。学校に通ったこともなく、友人もいない、恋をしたこともない。家の中にずっといて、カレンダーを見ても、何の楽しみもなく、未来の希望を描くことも出来なかった三十数年間だったそうです。
こうした人々を救いたい。失われた人生を取り戻し、これから先、新たな無戸籍者を生み出さない仕組みに変えていきたい。そう思っています。この間、何度も法務省にかけあって、何とか実態調査にこぎつけました。二月一〇日現在、全国で五五四人の無戸籍者が確認されています。ここ滋賀県にも九人の無戸籍者がいます。しかし無戸籍者の情報を保有している市区町村は、全国の自治体のわずか一七%。ですからこれは氷山の一角です。今まで政治の光が当てられてこなかった方々の力になれる政治家でありたい。超党派の議員連盟を立ち上げ、取り組むことで、一歩一歩、前に進めていきます。






