衆議院議員 武藤 貴也
10月末、政府代表団(伊原アジア大洋州局長代表)が平壌を訪れ、「特別調査委員会」の徐大河(ソデハ)委員長らと会談した。ソ氏は秘密警察にあたる国家安全保衛部副部長で、通常公に顔を出さないことから日本に対する「誠意ある対応」との見方もあるが、具体的な情報についてはほとんど提示されていないと見られている。
制裁解除し調査を開始して既に4ヵ月。9月に中国で行われた協議で北朝鮮は「準備段階であり、結果を出すのは難しい」と繰り返すだけであった。そればかりか日本が拉致の疑いがある行方不明者数を増やしたことを批判した。それでも「平壌に来たら、詳細な説明が可能だ」という宋日昊・朝日国交正常化担当大使の言葉を頼りに平壌入りした。
派遣を前に行われた自民党外交部会等において、拉致被害者家族会は平壌訪問に反対した。訪朝しても「誠実に対応した」という言質を与えるだけで何も成果がないという意見が大方だったからだ。その会議に出席していた私も「結果を出さない場合、制裁を再発動する期限を明確にし、訪朝すべきだ」と発言をした。
そもそも北朝鮮は、拉致被害者に関する情報を把握していると見られている。あれだけ独裁国家なので、当然拉致された人が何人で何処で何をしているか完全に把握しているだろう。従って「調査中」と繰り返すのは、制裁解除中に「人・物・金」の移動を行うための時間稼ぎだと思われる。
いつものことだが「開いた交渉の窓を閉じさせてはならない」という議論が出てくる。強硬に出てパイプが切れたら、それこそ救出は困難になるという主張である。7月に制裁を解いた時も、事実上譲歩し、解除したのはそのためだ。今回もそうした主張によるところが大きい。
しかしある専門家は、苦しいのは北朝鮮だと分析する。北朝鮮は取りたいものがあって接近してきた。北朝鮮担当者は「これとこれは必ず取れます」と金正恩第一書記に決済をもらい、特別調査委員会なるものを立ち上げたはずだ。ここで日本が譲歩せず席を立てば、嘘の見通しを語ったことになる。担当者は命懸けで協議に臨んでいる。日本が強く出れば、北朝鮮こそパイプを切らないため上司を説得し情報を出そうとするに違いないと。
北朝鮮を動かし、拉致被害者を助ける手段はもはや圧力以外にはない。北朝鮮には妥協によってお互いの利益を最大化しようという説得は通じない。従って政府は現実的かつ効果的な制裁再発動というカードを交渉に使うべきだ。そして仮に期限が守られなかった場合は、国際社会を巻き込んだ更に厳しい制裁を検討すべきだ。私はこのことを政府与党内で主張していきたい。






