滋賀県議会議員 山田 実
「売り手よし・買い手よし・世間よし」という「三方よし」はいくつかある近江商人の経営論の中でももっとも有名な商売の心得で、売り手と買い手がともに満足し、また世間・社会にも満足してもらうことがよい商売であり商売を長続きさせる秘訣であるという近江商人の心得をいったものです。
今年は牛肉などの産地偽装が大きなニュースになりました。大手のホテル・レストランまでもが「売り手よし」だけしか視野に入れないビジネスを行っていたことに驚かされましたが、こんな商売の仕方は論外にするとして「三方よし」の考え方は企業の社会的責任(CSR)を先取りした経営哲学です。
1990年代のバブルの崩壊、2000年代末のリーマン・ショック以降、世界経済の不安定性は続いています。アベノミクスは金融緩和と財政出動により民間投資を喚起する経済政策を進めていますが、今必要な経済政策は経済成長を取り戻すことよりも「新しい豊かさ(例えば、地元の高校や大学を卒業した人たちが就職できる場を地域に増やすことなど)」を構想し実行することが大事だと思います。
滋賀では地域の自治活動、ボランティア活動、NPO活動、企業の社会貢献活動が熱心に行われていますが、それは近江商人の「三方よし」の精神が県民性の中に受け継がれているからではないかと思います。この精神が経済成長至上主義の政策の中で失われてしまわないような社会経済政策が求められます。
そのためのひとつの考え方として、私は「三方よし・プラス1経済」を提唱したことがあります。「プラス1」とは「孫子(まごこ)よし(将来世代にとってもいいこと)」ということです。
これは2001年に第一回菜の花サミットを開催したときの資料集に書いたものですが「三方よし」の中の「世間よし」には今という同時代を生きる世代にとっての「よし」というニュアンスがあります。当然近江商人はもっと長い時間軸での「世間よし」の大事さを考えていたと思います。ならば、そのことをもっとはっきりと打ち出し、同時代人だけでなく未来世代にとっても「よし」とされる地域社会・地域経済をつくることを意識することが必要だと思います。
3・11東日本大震災は私たちに多くの教訓を残しました。単なる復興ではなく、これまでの経済成長一辺倒・ものの豊かさ追求一辺倒の私たちの社会を、子や孫の視点に立って再生していくべきだと考えます。






