参議院議員 林 久美子
十月に召集されたこの臨時国会も、残すところ一ヶ月をきりました。わずか五三日間の会期の中で、国家安全保障法案や特定秘密保護法案をはじめ、数多くの法案が内閣から提出され、窮屈な日程の中で審議が行われています。本来であればもっと丁寧に議論を積み重ねなければならないものも、衆議院・参議院ともに多数を占める与党自民党の数の力により、わずか数時間の審議で衆議院を通過しています。
そうした中で、国家戦略特別区域法案も提出されました。特別区域とは、様々な規制を限られた地域で外し、規制改革や経済活動拠点の形成などを行うものです。規制が成長の妨げになっている場合も多いことを考えれば、特別区域を設けること自体は決して悪いことではありませんし、大いに賛同するものもあります。しかし、その対象は慎重に選ばなくてはなりません。時に、ユニバーサルサービスやナショナルミニマムを崩し、結果として国民生活の安定や安心を破壊することにもつながるからです。今回の閣法では、雇用、医療、教育、農業などについて国家戦略特区が設けられることになっていますが、私は様々な問題があると考えています。
例えば、教育。「公立学校運営の民間への開放(公設民営学校の設置)→グローバル人材の育成等の多様な教育の提供」と記されています。国際バカロレアの普及拡大などグローバル人材の育成は、確かに重要だと思います。大いに取り組めばいい。しかし、よくよく話を聞いてみると、民間への開放をする対象は、義務教育課程の小学校、中学校も含む、とのこと。公立の小・中学校は、市町村が設置主体です。日本全国あまねく地域で、一定水準の質の良い教育を保障するために自治体が責任を負ってきました。また、自治体が設置主体ではない学校、例えば私立学校は、一定の厳しい要件をクリアした学校法人が運営しています。いずれにしても、子どもたちに安定した教育環境を保障してきたのです。それを民間開放する、と。そうすると何が起こるのか。非常に優良な主体が運営する学校では、ますます良い教育が行われるでしょう。一方で、経営が不安定になった途端に学校が閉鎖される、子どもが行き場を失う、質が低下した場合、お金持ちの子どもは引っ越して転校することも可能ですが、経済力のない家庭の子どもは質の低い教育を強いられる――。こうしたことが起こり得るということです。すでに学校法人ですら、経営難により突然閉校し、学生が困難な状況に置かれているケースもゼロではないのです。
まだ自分一人の力で生きていくことのできない義務教育課程の子どもたちに、こうした状況を強いることはできませんし、出来るだけ質の良い教育を保障するのは、政治の使命であると思います。しっかりと慎重に議論を重ねていかねばなりません。






