ダム事務所 大戸川ダムがあった場合の被害予測
問われる嘉田知事の責任
大津市などを流れる大戸川は、先の台風18号で深刻な水害に見舞われた。国土交通省近畿地方整備局の大戸川ダム工事事務所は、一区の大岡敏孝衆院議員(自民)の要請で、もし大戸川ダムがあった場合、台風18号が来ても、今回浸水被害にあった地域の約九割が被害から免れたという被害予測を行った。
大岡衆院議員らがデータを地元住民らに公表すれば、嘉田由紀子知事らが事実上、凍結した同ダムの早期建設を求める声が再燃しそうだ。
それは、ダムだけに頼らない嘉田知事の流域治水条例案そのものへの否定でもある。
●翻弄された移転者
昭和二十八年八月、大戸川が集中豪雨により氾濫(はんらん)し、流域一帯で死者四十四人、負傷者百三十人以上を出す被害に見舞われた。
この後も氾濫被害が続いたため、近畿地方整備局は昭和五十三年に利水、上水道、発電など多目的な大戸川ダム(事業費約七百四十億円)を大津市上田上牧町に計画。その後、設計、用地買収が進められた。
苦渋の末、大鳥居地区などの住民が移転した。しかし、本体のダム工事はいまも凍結されたままだ。
●四知事合意で凍結へ
公共工事見直しの機運の中、近畿地方整備局の諮問機関である淀川水系流域委員会は平成十七年、ダムに慎重な環境派学者らが勢いづいて、大戸川ダムや丹生ダムなど淀川水系五ダムの建設中止が妥当との判断を下す。
同委員会の代表選手として、十八年の知事選に送りだされたのが、「ダムの凍結・見直し」を掲げた嘉田氏だった。
嘉田知事の強い働きかけで二十年十一月、滋賀、京都、大阪、三重の四府県知事が大戸川ダムについて「治水効果は認めるが、河川整備計画に位置付ける必要はない」ことで合意した。
建設に反対する嘉田知事らの意見を重く受け止めた金子一義国交相は二十一年三月、大戸川ダム建設を当面凍結すると正式に表明。
●台風18号の被害深刻
今回の台風18号で大戸川も深刻な水害に見舞われ、被害が大きかった同市石居の石居橋の上流では、左岸の堤防がえぐられてしまった。
「毎年のように繰り返される大戸川の浸水の被害は、ダムを事実上、凍結に追いやった嘉田知事の責任が大きい」と批判するのは、大岡衆院議員。
調査を依頼した同氏は、大戸川ダム工事事務所長から、同ダムがあれば、先の台風18号で越水により浸水した堂村橋付近(大津市)では、最大で一・四メートルほど水位を低下させることができ、越水が減少することで浸水被害が約九割免れる効果があったという被害予測の報告を受けたからだ。
三区の武村展英衆院議員(同)もこの問題を国会の災害対策特別委員会で取り上げ、嘉田知事の責任も追及する構えだ。【石川政実】







