大津プリンスホテルでデビュー
◇東近江・日野町
「漬物にしかできないと思っていた」。今年五月から大津プリンスホテル(大津市におの浜)で、原産地である日野町産の日野菜を取り入れたメニューが新登場している。この二日には、生産農家や青空市の関係者、商工会・JA・町職員ら約四十人がホテルを訪れ、主役を引き立てる脇役として名演技を披露する日野菜の新たな一面を知り、発祥地の復興を図るべく生産拡大に向けて気持ちを高鳴らせた。
大津プリンスホテルでのメニュー化のきっかけとなったのは、昨年十一月に日野町鎌掛で開催された“日野菜漬けコンクール”。審査委員長として招かれた伊藤俊幸総料理長(現・グランドプリンスホテル高輪総料理長)が「ミニサイズの日野菜を見たい」と要望、急きょ用意された播種(はしゅ)から二十日程度の日野菜に高級食材としての可能性を見い出し、商談に結びついた。
漬物用の日野菜は、根の直径が五百円玉、長さが約四十センチ以上になるまで栽培し、播種から六十日で収穫する。これに対して、間引き日野菜は根の長さが十~二十センチと小ぶりだが、原種の特徴である紅白の鮮明な色合いとほのかな苦味を持ち合わせている。
六月末まで登場する料理では、旬のイサキと新ジャガのムースや牛フィレ肉の網焼きに丸ごと添えたり、酢漬けにして生ハムと調和させたり、刻んだものをご飯に炊き込むなど、和洋を問わず日野菜の個性が光る。
同ホテルへの一カ月の出荷量は約三十六キロで、すでに六百五十本ものミニ日野菜が活用された。北野登・和食料理長は「小さいサイズだと使い勝手が良く、無農薬の産地直送とあって鮮度も抜群。主役の魅力を引き出す名脇役でもあり、さらなる活用を研究していく」と意欲的で、「現在は間引き日野菜を提供してもらっているが、もっと広めていくためにも料理用のミニ日野菜を商品化してほしい」という。
課題は、原種から栽培した日野菜の生産量(年間約二十トン)をいかに高めていくか。日野菜を出荷している岡澤利雄さんは「漬物嫌いの若者が増える中、一般の人が日野菜と出会える場を設けてもらえたことが一番うれしい。鎌掛地区では生産農家が六、七軒にまで減ったものの、団塊世代前後の人たちが担い手となる新たな動きもあり、我々はそういった芽を育て次世代につなげていくのが仕事だと思う」と力を込める。
日野菜の晴れ姿を見て、藤澤直広町長も「ふるさとの味が一流の食材となって活躍するのは、町民にとっても誇り。主流である漬物用の生産をのばしながら、新たなジャンルも開拓し、特産振興につなげていきたい」と、日野特有の食文化発信を誓った。
室町時代に蒲生貞秀が鎌掛で発見してから守り継がれてきた伝統野菜。野口真一総支配人は「食材そのものにストーリーがある。今年で開業二十周年を迎え、滋賀に根を張る一企業として発信していく役割がある」と食を通じた地域貢献を目指し、秋にも日野菜メニューを提供する予定。
日野菜メニューに関する問い合わせは、大津プリンスホテル(077―521―1111)まで。










