市民による奥山保全・復元
◇全県
こんこんと水がわき出る森が消える時、すべての産業、都市が消える。日本を自然保護大国に―。そんな志を掲げて市民団体「日本熊森協会滋賀支部」(村上美和子代表)は、水と酸素を大量に生み出す豊かな自然林が育まれ、ツキノワグマなど野生動物がすめる奥山の保全・復元に取り組んでいる。
同協会は、クマをシンボルにして、スギ・ヒノキなど針葉樹だけの人工林でなく、広葉樹の実(ドングリ)のなる豊かな奥山生態系の保全、復元に取り組む実践型自然保護団体だ。
滋賀支部広報の山口敏美さんは「活動の特徴は、動物保護が主でなく、野生動物もすめる奥山の保全・復元を目的としています」と説明する。
同支部は平成十六年、会員百人でスタート。次第に賛同者を増やし、今では四百五十人が入会している。専従職員はおらず、会員全てボランティア。このため休日に活動し、成長して込み合った人工林の一部を抜き切りする間伐や広葉樹苗の植栽に励む。
晩秋の休日、福井県境に近い塩津県有林(西浅井町)。チェーンソーのエンジン音が、山林の静寂の中で断続的に響いていた。
この日は会員九人が、県との協定に基づいて間伐を行っていた。
同県有林(約二百ヘクタール)は、ヒノキ・スギなど針葉樹が七割以上を占める人工林。
「手入れが行き届いていなかった辺りは、木や枝が密生して暗かったのですが、今は間伐でずいぶん明るくなりました。林業は小規模経営の林家が多く大変ですよ」と山口さん。
間伐されない人工林は、光が届かないため木々の成長が悪い。木の実もないので動物は住めない。その形容から「線香林」といわれる。
かつて奥山は、えさとなるドングリのなる広葉樹(ブナなど)が茂る豊かな自然林だった。太陽の光が差し込み、下草から高木まで繁殖していた。
ところが戦後、木材需要の伸びで自然林は伐採、ヒノキなどが植林された。県内の人工林率は四〇%に及ぶ。
近年は国材価格が低迷し、人工林は手入れ不足で荒れ、雨で表土が流出して保水力が弱まり、土砂災害を起こしやすくなった。
えさ場を失った動物は、人里へ出没するようになった。若者の流出で過疎に悩む農山村は、動物による農作物被害にも悩む。
このため協会は、奥山保全・復元して、昔のように人と動物のすみ分けを図ろうと、▽拡大造林の中止▽全額公費による人工林の強度間伐▽野生動物が人里へ出没しないよう公費による防除被害対策▽奥山広葉樹林の保全復元―などを提案している。







