近江八幡市の中西隆さんが自費出版
【東近江・日野】 滋賀県和算研究会代表を務める近江八幡市杉森町の中西隆さんがこのほど算額から地域文化の謎に迫る書籍「算額の奥に広がる世界―ある算額の誕生余話―」をサンライズ出版から自費出版した。
算額とは、日本で独自に発展した算術体系・和算で難題が解けたことの記念や、後に解読・証明する人に託すために額や絵馬に書いて神社や寺院に奉納されたもの。
中西さんは県立高校などで数学教師として勤務。退職後は京都橘大学、県立盲学校の非常勤講師を歴任した。算額に関する著書は今回が2作目となる。
前作「算額奉納した郷代官井上家の物語―青少年赤十字の先駆者井上定雄の家系―」(井上遊さんとの共著)では、栗東市の善勝寺奉納算額を切り口に、算額を奉納した郷代官とその子孫で青年赤十字を創設した井上定雄氏への歴史的流れを明らかにした。
中西さんは「これまでの算額研究では、奉納された内容の数学的研究が主だったが、奉納された地域や時代、人物なども浮かび上がらせることができる」と語る。
今回出版した「算額の奥に広がる世界」では、神明神社(三重県四日市市川島町)に奉納されている算額に「江州日野神社奉納答」と記されていることに着目。江州とは現在の滋賀県を指す言葉だが、県内に同「奉納答」の元になったと算額は現存しておらず、日野神社の所在地も判然としていない。
中西さんは、現在の日野町内でも江戸時代に日野と呼ばれていたのは大久保、村井、西大路の3町であったこと、同町村井の馬見岡綿向神社が「日野の大宮さん」とも称されていることなどから、元の算額は同神社に奉納されていたのではないかと推測。さらに地域的に近い大濱神社(東近江市伊庭町)に奉納された算額が「江州日野神社奉納答」の図形問題と類似していることから、その地域的つながりの可能性を論考する。さらに、明星輪寺(岐阜県大垣市)の奉納算額の一部が大濱神社の内容に酷似しており、伊庭町の隣の躰光寺町の人物が奉納していることから、そのつながりにも考察を広げ、江戸時代の時空の広がりと人々の交流を浮き彫りにしている。
中西さんは「現代では算額自体のことを知らない人の方が多くなっているが、探っていくと当時の人と人、人と郷土の関わりがわかってくる」と述べる。
同書はA5判、102ページ。中西さんは同書を県内の図書館に寄贈する予定。また各種プラットフォームで電子書籍版の販売も予定している。






