卒原発(下)菜の花プロジェクトネットワーク代表 藤井絢子さんに聞く
原発に依存しない「新しいエネルギー社会」をつくるために、市民はどう取り組んでいけばいいのか�\、まさに待ったなしの課題である。このヒントになるのが、菜の花の栽培を通し、「食」と「エネルギー」の地域自立を目指す資源循環の地域モデルである菜の花プロジェクトだ。そこで菜の花プロジェクトネットワーク代表である藤井絢子さんに新しいエネルギー社会への道筋を聞いた。【石川政実】
―県は今年度中に原発に依存しない「新しいエネルギー社会の実現に向けた道筋(ロードマップ)」をつくろうと、四日に有識者による第一回懇話会を開催したばかりだが。
藤井 ロードマップは、再生可能エネルギーに転換する量の議論だけではなく、市民がどう参画して新しいエネルギー社会をつくるか、という視点に着目している。
たとえば再生可能エネルギーが進んでいるデンマークでは、設置総キロワットに対し「市民所有」を三〇%以上にするということが法律に盛られている。
県内でもメガソーラーが散見されるが、市民との共同所有にはなっていない。設置者からは賃料が入るだけで、市民、地域経済に還元されていない。
湖南市で平成二十四年、全国に先駆けて「自然エネルギーは地域のもの」という“地域自然エネルギー基本条例”ができたが、さらに県は「市民所有」を盛り込んだ条例を目指せないか。太陽光、バイオマス(動植物などから生まれた生物資源)、小水力など県内にある自然エネルギーがより地域に根ざし、地域の経済を回すことにつながるからだ。
―県内で先駆的に行われている再生エネルギーの取り組みは。
藤井 太陽光発電なら、同八年に市民が出資する市民共同発電所1号が湖南市でスタートし、今では各市町で増えてきている。配当金は通常の日本銀行券のところもあるし、地域通貨のところもある。将来、「(仮称)びわこエネルギー会社」が設立できて、配当金はこの会社の管理で、地域通貨になれば理想だが…。
もうひとつは、バイオマス。日本で言えば、森林、生ごみを含めていくらでも素材はある。
県内では、米原の木質チップ発電所、温泉八風の湯の木質チップボイラー、湖東フラワーの薪(まき)ボイラー、家庭用の薪ストーブなどの利用に取りかかったところだ。
また廃食用油のBDF(バイオディーゼル燃料)化では八年、菜の花プロジェクトが旧愛東町(東近江市)で全国の自治体に先駆けてプラントを設置した。なお豊郷町のGS油藤商事は、全国でも注目されるBDF推進者だ。
―このような地産地消の地域づくりは、人口減少問題の歯止めをかけようとする国の地方創生につながるのか。
藤井 そもそも「地方創生」でなく、「地域再生」だと思っている。
全国各地には、「再生可能エネルギー」だけでなく、「食」「福祉」を組み合わせて地域自立を図ろうとする実践事例がたくさんある。旧愛東町の「あいとうふくしモール」(注)もその一例だ。
二十世紀の工業化社会においては、地方から都市へ若者が大きく移動した。だが二十一世紀の今、若者の中には大都会から地方へと、違う暮らし方を求め始めている。
地域の中で暮らすには、農業、林業、漁業だけでは無理。いわゆる「半農半X」の暮らし方だが、各地域で小さな経済の仕組みや生業(なりわい)を組み合わせることで、若い人が集まる流れをつくれないか。県内でも事例をどんどん増やしたい。可能性は大きい。
―三日月県政になにを求めるか。
藤井 一番大事なのは、滋賀県が「卒原発」と持続可能な社会を全国や世界へどう発信するかだ。その原点は琵琶湖。水問題を解決する道筋をアジアと共有していくべきだ。県の友好県省である中国湖南省ではヒ素問題をはじめ、土壌、水の汚染などが深刻化しており、県のノウハウをパッケージにして伝えることができる。
アジアの「水の知事」、「卒原発の知事」と言われるように期待している。
(注)あいとうふくしモール=高齢者や障がい者の「ケア」と「食」「エネルギー」を一体化させた複合施設で二十五年にオープンした





