卒原発(中)再稼働反対の意見書否決
◇全県
●関電幹部が説明
「関西電力から説明を聞いてくれという話があり、お受けしたが、名刺交換をしてびっくりした」と語るのは、県議会(自民党県議団以外の)会派の県議だ。
十六日の六月県議会最終日の数日前に同会派控室に現れたのは、櫟(いちのき)真夏・関西電力滋賀支社長らそうそうたる面々だった。関電側は、原発再稼働に向けた安全対策を説明した。
「なぜ地方議会の意見書に神経をとがらせるのか」と県議が水を向けると、関電側は「経済産業省がすごく気にしているんですよ」と真顔で答えた。水面下で必死の画策が行われていたのだ。
●どんでん返し
問題の意見書案(表参照)は、福井地方裁判所が再稼働に対して差し止め仮処分の決定をしたことを尊重し、高浜発電所3号機および4号機の再稼働を行わないことを国に求める内容だった。
この意見書案をまとめた「チームしが県議団」(注)代表の清水鉄次県議は「共産、公明、良知会も賛成、自民党の大野和三郎県議も賛成で、意見書案は可決されると読んでいた」と振り返る。
ちなみに県議会の会派構成は、自民党県議団(二十一人)、チームしが県議団(十五人)、共産党県議団(三人)、公明党県議団(二人)、無所属系の良知会(三人)で、定数が四十四。
●福井地裁がアダ!?
十六日の本会議で、同意見書案の採決が行われた。
チームしがの今江政彦県議、柴田智恵美県議、公明党の粉川清美県議、中村才次郎県議、良知会の蔦田恵子県議の五人が退席。自民党県議団から大野県議が賛成に回り、残る自民党県議団は反対し、チームしがなどが賛成で、賛正十九、反対十九と可否同数となり、西村議長の裁決で否決された。
卒原発の自治労(連合滋賀)の組織内候補である今江県議は「今回の意見書案と請願は、福井地裁の仮処分決定に基づいて、反原発、即時ゼロの色合いが強すぎた。私は連合滋賀議員団会議会長でもあり、連合滋賀、民主党の大局的な立場で退席した」と説明する。
UAゼンセン(同)の組織内候補で、川端達夫衆院副議長を師と仰ぐ柴田県議も「福井地裁の仮処分決定だけで原発再稼働に反対するのにはついていけなかった。また同じ仲間の関電労組が原発の安全管理に努力しているのを思うと意見書案や請願に賛成できなかったのも事実」と苦しい胸の内を語った。
一貫して原発再稼働に反対してきた公明党の粉川県議も「福井地裁の処分決定がなされたが、今後変わることもあり、これを根拠にする請願や意見書案には無理があった」と言う。
蔦田県議は「関電が説明に来て、支持者から『関電も困っているし、頼むよ』と声があったのは事実だが、退席した理由は粉川県議と同様だ」と苦笑する。
自民党県議団で唯一賛成した大野県議は「県民の多くが若狭の原発再稼働に不安を抱いているときに、反対するのは地方議員としての責務だ」と話す。
自民党中堅県議は「福井県に隣接する滋賀県の県議会で再稼働反対の意見書案が可決されるのは、経産省として阻止する必要があった。いずれ民主党県連や連合滋賀も、関電労組に配慮し、三日月県政の『卒原発』を骨抜きにするはずで、意見書案のゴタゴタはその前兆」とほくそ笑んだ。
【石川政実】
(注)県議会の民主党会派「民主党・県民ネットワーク」と、嘉田由紀子前知事を支えた地域政党の会派「対話の会」は昨年十月、新統一会派「チームしが」を結成した。三日月県政を誕生させた対話の会や民主党県連、連合滋賀�\などの要になった「チームしが」を前面に出して、今春の県議選など統一地方選を乗り切ろうとした。
否決された再稼働反対の意見書案
本年4月14日に、福井地方裁判所において関西電力高浜発電所3号機および4号機の再稼働に係る差止めの仮処分の決定がなされた。
この決定では、高浜原発で基準地震動である700ガルを超える地震が起こらないという関西電力の地震想定を信頼する根拠は乏しく、基準地震動を下回る地震であっても外部電源と主給水が断たれ、冷却機能喪失による炉心損傷に至る危険が認められるとするとともに、原子力発電所の新規制基準は緩やか過ぎ、これに適合しても安全性は確保されておらず、原発の運転により人格権を侵害される具体的危険性が認められるとしている。
国際原子力機関(IAEA)が、本年5月に出した最終報告書の中においても、東京電力福島第一原発事故を総括し、何度も安全対策の強化を迫られる機会があったにもかかわらず、対策を怠ってきたとして国と東京電力を強く批判している。
また、重大事故に備えて、原子力施設からおおむね半径30kmの範囲を目安とされている緊急時防護措置を準備する区域内に所在する地方自治体は、避難計画を策定することが必要となっているが、その計画の実効性を高めることが課題となっているところであり、現状のまま再稼働が行われると、住民の安全が十分に担保されず、重大事故が発生した場合には、住民の命や健康、暮らしに大きな被害が発生するだけでなく、近畿1,450万人の水源となっている琵琶湖への影響が懸念されている。
よって、政府には、福井地方裁判所の再稼働に係る差止めの仮処分の決定を尊重し、高浜原発の再稼働を行わないよう強く求める。





