老朽化に伴う設備投資、採算見込めず
【東近江】 米どころ、水どころの東近江市から酒蔵が一つ消える。「志賀盛」「近江龍門」の銘柄で知られる近江酒造(八日市上之町)が6月末で106年の歴史に幕を閉じる。老朽化に伴う莫大な設備投資が課題となっていた。(高山周治)
同社の施設は創業当時の木造の酒蔵をはじめ、老朽化が進んでいる。現地での建て替えや移転も検討したが、「設備投資に見合う採算が見込めず、困難」と判断した。さらに物価高騰の増加分を価格転嫁できない、業界の困難な経営環境もあった。
八日市の発展と共に歩んだ1世紀
同社の創業は1917年(大正6)。地元の酒造家や酒販業者が集い、当時としては先駆的な株式会社方式で設立された。代表的な銘柄「志賀盛」は、“志賀の地で大いに盛んとなれ”との願いを込めて名付けられた。
1921年(大正10)、沖ヶ原の八日市飛行場に陸軍航空第三大隊が編成されると、志賀盛は航空隊の御用達として愛飲された。さらに、終戦最後の飛行では、志賀盛が上空から八日市の街にまかれ、飛行場の閉鎖を惜しんだエピソードが残る。
戦後は大手酒造会社に酒を卸し、大手の銘柄で販売される「桶(おけ)売り」用の製造で業績を伸ばした。
1980年代後半になり、消費者から「こだわりの酒」が求められると、独自路線を追及して全国新酒鑑評会で最高賞の金賞を87年(昭和62)をはじめ2度受賞し、新銘柄として「近江龍門」を投入。さらに近年では、斬新なラベルをつけた「ねこ正宗」が、若者やネコ愛好家の間で人気商品となった。
地域活性化にも関わり、びわこジャズ東近江の一会場になったり、近江鉄道でかつて運行された国内最古級の電気機関車「ED314」の保存活用の拠点となってきた。
しかし、人口減や食生活の変化で日本酒の消費量が減少するなど、厳しい経営環境が続いていた。
同社によると、土地は不動産会社に売却し、住宅用地に活用されるという。敷地内にあるED314については、小公園として現地保存する。
今宿喜貴代表取締役(48)は、「断腸の思い。1世紀にわたり皆様にかわいがってもらったが、時代の流れにあらがえなかった。長年、愛飲してもらい、感謝したい」と、しみじみと語っていた。







