武村正義氏が安倍政権を斬る
◇全県
東京都知事選がきょう九日に投開票されるが、脱原発を掲げる細川護熙元首相が舛添要一元厚生労働相に敗れる事態になれば、脱原発の世論が沈んでしまい、安倍政権は原発再稼働や新設に突き進むものとみられている。そこで武村正義元新党さきがけ代表に、東京都知事選の影響や安倍政権の問題点を聞いた。(石川政実)
集団的自衛権よりも
憲法改正をきちんと提起すべきだ
―東京都知事選で、細川さんの苦戦が予想されていますが。
武村 わたしは細川さんの脱原発の考え方には共鳴もするし、あのひとの政治感覚は鋭いと評価しています。ただテレビで拝見していて、正直、時間がたったなあと感じます。脱原発はいいとしても、都政全般について、あまり魅力的な政策を語っておられないのも、選挙が盛り上がらない原因なのかもしれませんね。
しかし原発に対する疑念、不安は国民世論の中に奥深く広がっていますから、都知事選の結果いかんで問題が終わることはない。もちろん細川さんが勝てば、一気に野党再編が勢いづき、安倍政権を少しは追い込めるのですがね。
―安倍首相が靖国参拝を行い、中国や韓国の反発やアメリカの失望を買ったわけですが、支持率にはさほど影響が出ていないようですね。
武村 若い日本人にはほとんど、第二次世界大戦の的確な情報が伝わっていません。だから安倍さんが「国のために命を捧げた人をお参りするのがなぜいけない」と言えば、「そりゃそうだ」とうなずく人が圧倒的です。最近は、なぜ中国が怒っているのか、韓国が怒っているのか、相手の立場に立って考えようとしない日本人が増えてきました。
来年は戦後七十年を迎えますけれど、ドイツと日本が第二次世界大戦を起こして負けて、残念ながら戦勝国中心に戦後の新しい秩序ができたわけです。だからニュルンベルグ裁判(ナチス・ドイツの戦犯裁判)も東京裁判もそれまで例がなかった、勝った国が負けた国を裁くことになった。しかし日本は自ら戦争の総括をしないまま、サンフランシスコ条約で東京裁判を認めて再出発をしました。それは、A級戦犯者が戦争責任者であるとしたわけです。そのA級戦犯がまつられている靖国神社に、時の総理大臣が参るということは、戦後にできた秩序に異を唱えることになるわけです。だから中国、韓国だけでなく、世界に波風を立てている。根本は第二次世界大戦で日本はなにをしたかです。朝鮮を植民地支配したし、日中戦争は明らかに侵略戦争ですしね。一方的に中国に入って十年近く戦争を起こして何百万人という人を殺したわけですから。それは歴史の事実として認識しておかなければいけないことです。
昔、元ドイツ大統領のヴァイツゼッカー氏が「過去に目を閉ざす人は、現在についても盲目である」という有名な言葉を残していますが、まさに今の日本人全体がそのような状態にあるような気がします。
―安倍政権が進める集団的自衛権については。
武村 七十年近くやってきた平和主義の日本の考え方を大きく変えていこうということですから、それなら相当時間をかけて国民的な議論をしないといけない。集団的自衛権をある日突然、閣議で決めて、憲法解釈だけで、昨日まで黒と言ってきたものを白だとする安易な憲法解釈だけはしてほしくない。どうしても変えるなら、憲法改正をきちんと提起して国民的議論にしていくべきです。
―この夏には滋賀県でも知事選が行われますが。嘉田県政については。
武村 七年半の嘉田県政を見ると、とくに一期目は、嘉田さんが公約通り新幹線やダムなどを止められたことを高く評価します。「卒原発」の考え方にも共鳴します。環境に対する嘉田さんの姿勢は一定評価したいと思います。
ただ嘉田さんが一昨年、小沢一郎さんと一緒になって国政政党の日本未来の党をつくったことには、少し違和感を抱きました。ともあれ、三期目の仕事に大きなテーマをお持ちなら出馬されるべきだし、そうでないなら八年で全うされてもいいのではないか。首長の評価は、長さで決まるものではありません。






