中央政界特報

■平成30年6月21日(木) 第5364号

「政治特報」

 100歳の中曽根康弘元首相。ネクタイを締めたスーツ姿で事務所に顔を出す元気ぶり。俳句をたしなみ、これまでの句には大勲位政治家の胸中が。教えられるものが多い。

 これまでに詠んだ句は数千句にも。
 『はるけくも 来つるものかな 萩の原』
 初当選してから35年余、57年11月、首相の椅子にすわったときの句だ。
 退陣する前の3日間、蔦子夫人をともなって熱海温泉で静養したときには、
 『秋月を 浴ぶ 岩風呂の 孤愁かな』
 退陣の日が近くなった秋に、
 『独り湯の いずこに鳴くや ちちろ虫』
 『しばしとて もみじとともに 降りごもる』
 やはり政権在位の先が見えてきた秋には、
 『言えぬこと 近ごろ多し 蚊やり焚く』
 去ることの寂しさがあふれ出ている
 政権の座を逃がしたときには、
 『万山の 草木動かず 冬に入る』
 55年、大平首相の急死によって「次は自分」と意気込んでいたのを鈴木善幸氏にさらわれてしまった。
 『鯉一念 沈みたるまま 年明ける』
 61年秋、1年の政権続投がきまったとき、
 『ひさかたの 句ごころ秋の 長湯かな』
 ホッとし、やれやれといった心境がにじみ出ている。
 新しい年を迎えた正月の心境も句に詠んでいる。
 54年の元日には、
 『潮けぶる 大日輪を 伏し拝む』
 58年元日には、
 『巨(おお)き寿(なみ)初日おろがむ 脚(あし)にきぬ』
 59年正月には、
 『松は松 石は石にて 初日影』
 中曽根元首相は米国レーガン大統領と「ロン」
「ヤス」とファーストネームで呼び合うほど親しく、外交を得意としていた。
 世界を飛びまわっていたときにも詠んでいる。
 59年11月、インドのガンジー首相国葬に参列したとき、
 『まつりごと 悲しきさだめ 秋深し』
 60年、オーストラリアに行く途中、ブーゲンビル島の上空で戦友をしのんで、
 『群青(ぐんじょう)の濃ければ祈り また深し』
 60年、ボンサミットでは、
 『言うべしと ボタン押す指 汗ばめり』
 首脳会議の緊張感があふれている。
 そして、
 『壁越えて 薫風旗を ひるがえす』
 数千句の中で「最高傑作」と胸を張っているのは、
 『暮れてなほ 命の限り 蝉しぐれ』

「小泉家の長男は」

 「原発ゼロ」をライフワークとして声を上げている小泉純一郎元首相。
 孝太郎氏、進次郎氏と2人の子供がいるが、まったく違う世界で頑張っている。
 次男の進次郎氏は父親の後を継ぎ、政治家に。
 自民党筆頭副幹事長として、「将来の総理大臣」ともっぱら。
 政治の世界に見向きもしなかった長男の孝太郎氏。
 その活躍ぶりは世界こそ違え、父親、次男に負けていない。
 テレビ東京系の人気連続ドラマ「警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室〜THIRD SEASON」が7月20日からシリーズ第3弾としてスタートする。
 孝太郎氏がこれに主演。出世に無欲な変わり者のエリートキャリアを演じる。
 孝太郎氏を主役として始まったシリーズで、高い視聴率を得ていることでシリーズ3にまで成長。
 「3にまでなったかと思うと、ますます力が入ります」
 小泉元首相が結婚したのは昭和53年。35歳の時だ。
 福田赳夫首相が媒酌人を務め、招待客約2500人という盛大な披露宴で、国会議事堂を型どったケーキにナイフを入れている。
 だが、4年で破綻。孝太郎氏と進次郎氏をひきとって育てあげている。
 孝太郎氏は2000年に「21世紀の石原裕次郎」のオーディションに応募するが2次選考で落選。それがいま人気俳優に。
 78年7月10日生まれ。誕生日がくると40歳に。
 小泉元首相はドラマがはじまると、テレビの前に釘づけだそうだ。

「電子版」

 JR代々木駅を下車し、徒歩約5分ほどのところにそびえ立つ地上11階、地下1階のビル。
 共産党の本部ビルだ。政党の建物といえば永田町の自民党本部ビル。
 地上9階、地下3階。延べ床面積約1万5500平方メートル。
 この自民党本部ビルよりも共産党本部ビルのほうが大きい。延べ床面積は約1万6000平方メートルも。
 05年秋に完工と、まだ新しい。建物の中の設備も充実している。
 4階にある食堂は広々としている。やはり4階には15万冊以上の蔵書がある図書館。
 共産党といえば機関紙「しんぶん赤旗」が有名。
 発行部数は政党の機関紙では群を抜いて多い。
 その「しんぶん赤旗」が7月2日から、電子版としても発行される。
 いま世界的にペーパーの新聞が電子版に。
 共産党が電子版を発行することになったのは「共産党をより身近に」の方針から。
 そこには昨年10月の衆院選の苦い結果から。
 その前、14年の衆院選は大勝だった。
 13人も議席を増やし、「秘書が足りない」という大騒ぎに。
 「しんぶん赤旗」の1面に、秘書募集の案内を出しているほど。
 200ほどの選挙区で10パーセント以上の得票を得て、供託金が8億円ほども戻ってきている。
 それが昨年の選挙は議席を減らしてしまった。
 共産党は政党の中で唯一、政党交付金を辞退している。
 電子版の発行は、金銭面ではなく、「親しみのある党」としてのアピールに。
 志位和夫委員長はここに力を入れている。

「少子化対策は」

 安倍政権が掲げる重要政策である「少子化対策」。
 6月4日、内閣府の「少子化克服戦略会議」は、育児休業制度の改正、子どもが多い家庭への経済的支援策などの提言をまとめている。
 日本は世界でも類のない高齢化社会に入り「人生100年時代」に。
 厚生労働省発表によると17年の65歳以上の高齢者は3515万人。
 だが、その一方で少子化が止まらない。
 やはり厚生労働省の発表にそのことはハッキリとあらわれている。
 17年に日本国内で生まれた日本人の子どもは94万6060人。
 これは統計を取り出してから最少。
 2年連続して100万人を切ってしまっている。
 ちなみに女性が一生に産む子は1・43。
 このままでいくと日本の人口は減少していくばかり。
 「国勢調査」が初めて行われたのは1920年。このときの人口は男性2800万人余、女性2700万人余の5500万人余だった。
 1億人の大台に乗ったのは1967年。
 以後、最も人口が多かったのは2008年で1億2800万人余。
 これまで2度のベビーブームがきている。
 1度目のベビーブームは47年から49年。3年間で806万人余が誕生している。
 第2次ベビーブームは71年から74年。
 人口減少が始まったのは05年から。
 現状からして30年後には1億人を割ってしまうことにも。
 「少子化克服戦略会議」は松山政司少子化担当相の私的諮問会議。
 提言の次はどう手を打ってくるか。

「アプローチ」

 6月6日夕方、安倍晋三首相は政府専用機で羽田を飛び立ち、米ワシントンに。
 7日にトランプ大統領と首脳会議。
 8、9日にはカナダのシャルルヴォアで開かれたG7(主要7カ国首脳会議)に出席。
 そんなあわただしい日程の中、5日夜、東京・有楽町のフランス料理店「アピシウス」に姿を現わしていた。
 自民党竹下派の幹部との食事会。
 竹下派からは竹下亘党総務会長、茂木敏充経済再生相、吉田博美参院幹事長が。
 この食事会、竹下氏の竹下派会長就任を祝い、安倍首相のほうから呼びかけたもの。
 会食はなんと3時間ほども。
 この時間の長さが永田町で注目されている。
 「話すことは多かったのだろう。いろいろあるから。やはり9月の自民党総裁選についての話が中心になったのでは」(永田町筋)
 総裁選まで3カ月余。現時点で3選を目指す安倍首相支持を明らかにしているのは自らの出身母体である細田派、盟友麻生太郎副総理兼財務相の麻生派、自民党を束ねている二階俊博幹事長の二階派。
 この3派で190人を超える。
 だが、与党内からも批判の声が出ており、流動的。
 竹下派の勢力は50人。額賀福志郎氏が竹下氏に派閥を譲る前の「額賀派」のときは「安倍支持」を明らかにしていた。
 だが、竹下氏は「フリー」の立場を強調している。
 そればかりか、安倍首相に対する批判の声を高くしている。

「神通力は」

 小泉純一郎元首相の神通力も通じなかった。
 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働が争点となった新潟県知事選。
 結果は与党が支援した花角英世氏が勝利。
 小泉元首相は投票前、新潟に入っている。
 小泉元首相のライフワークは「原発ゼロ」。
 政権の座を降りてからというもの、激しく安倍晋三首相を批判。
 直接の応援ではないが「原発は廃炉にすべき。そういう候補に当選してもらいたい」と。
 「原発推進論者は絶対に当選させない」とも声を高くしていた。
 安倍首相への批判のトーンを高くしているのは小泉元首相だけではない。
 次男の小泉進次郎自民党筆頭副幹事長も。
 加計学園問題に関連して「特別委員会設置」を求める発言を。
 永田町では「親子揃って安倍首相に謀反か」の見方まで。
 小泉元首相は安倍首相の自民党総裁3選にも言及している。
 「信用されていない。無理だろうな」
 新潟県知事選は安倍首相にとっても、小泉元首相にとっても絶対に負けられない一戦だった。
 「関ヶ原の決戦とまではいわないが、今後に大きな影響をおよぼす戦い」
 永田町ではそう見られていた。
 安倍首相は9月の総裁選、そして来年の参院選、統一地方選に弾みをつけることができるか。
 小泉元首相は「原発ゼロ」のウネリを国民の間にさらに大きくすることができるか。
 その結果は安倍首相の右手があがった。
 神通力を発揮できなかっただけに、これから小泉元首相はどう巻き返しに出てくるか。

「威信を発揮」

 自民党二階俊博幹事長が面目を保った。
 「二階幹事長が一番喜んでいるのではないか」
 永田町での声だ。
 与党と野党が正面からぶつかり合った新潟県知事選。
 与党が支援した花角英世氏が、野党が支持した池田千賀子氏に勝った。
 野党の「必勝」への力の入れ込みようたるや大変なものがあった。
 野党各党首が新潟にはいり、そろい踏みで声を張り上げていた。
 「野党側が押している」の見方が。
 だが、結果は与党支援候補に。
 二階幹事長にとっては、一地方首長選挙ではなかった。
 絶対に勝たなくてはならない選挙だった。
 前海上保安庁次長の花角氏は、二階幹事長の旧運輸相時代の秘書官。
 勝敗によっては、二階幹事長の立場に影響してくる。
 現に「負けるようなことがあったら、幹事長としての責任問題にまでなってくる」(永田町筋)とまで言われていた。
 元の秘書官の勝利で、二階幹事長はあらためてその「パワー」を見せつけることに。
 自民党にあって、二階幹事長の権勢は絶対的ともいえるほど大きい。
 麻生太郎副総理兼財務相が厳しい批判を受けていることもあり、二階幹事長が自民党の「ドン」に。
 若手議員からは「オーラがすごい」と。
 9月の自民党総裁選。二階幹事長は「1ミリたりとも変化はない」と安倍首相の3選支持を明らかにしている。
 このことからも新潟県知事選での二階力には安倍晋三首相も「安堵」だ。