中央政界特報

■平成30年6月7日(木) 第5362号

「政治特報」

 自民党総裁選まで4カ月もない。「ポスト安倍」で注目されている野田聖子総務相は出馬してくるか。

 永田町ではこんなことが言われている。
 「野田氏の総裁選への意気込みは強い。日本初の女性首相をめざしている」
 米国の大統領選でクリントン氏が「ガラスの天井」を破ることができずトランプ氏に敗北。
 昨年は小池百合子東京都知事が自らの失言で政権の座に見放されてしまった。
 この事実を、野田氏は「しっかりと見ている」(永田町筋)
 日本初の首相狙い。そこには15年の総裁選の「リベンジ」も。
 このとき出馬の手を挙げたのは安倍晋三首相と野田氏の2人。
 だが、野田氏は立候補までにはいたらなかった。
 出馬するには20人の国会議員による推薦が必要だ。
 この20人の推薦人に1人足らずに、立候補を断念。
 小泉純一郎元首相以来14年ぶりの「無投票再選」へ首相サイドの「ストップ野田」はすさまじかった。
 投票前の7日間で、野田陣営の切り崩しを。最後は野田氏からの電話には出ない議員も。
 結局、最終的に集めたのは19人。
 それがいま、安倍首相はしきりに炊きつけている。
 「出るべきだ」と。
 そこには野田氏が出馬することで票が分散されるという読みがあるのは確かだが。
 言動が活発になってきているのは石破茂元幹事長。地方行脚に加え、安倍政権への批判のトーンを高くしている。
 岸田文雄政調会長氏が動きを加速させてきている。
 6月2日の通常国会会期末をもって出馬を明らかにすることを口にしている。
 野田氏はどうか。
 5月22日、野田氏は衆院本会議で、国会議員在職25年の「永年在職表彰」を受けた。
 この表彰は安倍首相、岸田氏も一緒に受けている。
 国会議員としてのキャリアで野田氏は安倍首相、岸田氏にも一歩もヒケをとっていない。
 野田氏が力を入れているのは女子力のパワーアップ。
 5月25日、野田氏は地方女性議員との意見交換会を。参加した女性地方議員は全国から18人。
 3月1日には国会内に「超党派ママパパ議員連盟」を立ち上げている。
 副会長は公明党の高木美智代衆院議員と立憲民主党の蓮舫参院議員。幹事長は自民党の橋本聖子参院議員。
 また地元岐阜には「岐阜女性政治塾」を。
 列国議会同盟(本部ジュネーブ)の発表では日本の女性の議会進出は193カ国中、158位。最下位に近い。
 石破氏のように激しく動いてはいないが、じっくりと力をふくらませてきている。

「永田町のざわめき」

 永田町が騒がしい。自民党には細田派、麻生派、岸田派、竹下派、二階派、石破派、石原派、そして谷垣グループが。
 この各派の動きが急になっている。
 迫ってきている9月の総裁選を睨んでのもので、額を突き合わせての会合があっちでもこっちでも。
 5月23日夜には麻生派と二階派が、竹下派と石原派がそれぞれ会合を持っている。
 翌日の24日には細田派と麻生派が。
 麻生派と二階派の会合に顔を出していたのは麻生派は棚橋泰文氏、二階派は平沢勝栄氏。
 会合では何が話し合われているか。
 「総裁選への情報交換。そして連係の確認が」(永田町筋)
 3選を目指している安倍晋三首相を支持しているのは細田派、麻生派、二階派。
 細田派は安倍首相の出身母体だ。
 その勢力は自民党派閥の中で最大。
 麻生太郎副総理兼財務相は安倍首相の3選の音頭を取っており、二階俊博幹事長は安倍首相支持を「1ミリたりとも動かない」と。
 安倍首相と距離を置いているのは竹下派と石原派。
 竹下亘総務会長は語気も強く、批判の声を高くしている。
 これまでは各派の派閥領袖同士の会合だったが、ここにきて派閥の実務をあずかる幹部の会合に。
 「実務者同士の会合が増えてきたのは、足場固めがいよいよヤマ場にきていることの表われ」(永田町筋)
 現段階では細田派、麻生派、二階派の勢力が圧倒している。
 派閥間の動きが注目される。

「サミットでの立ち位置」

 今年のサミット(主要7カ国首脳会議)は6月8、9日にカナダで。
 安倍晋三首相はもうすっかりサミットの常連だ。 サミットで顔を合わせる首脳は様変わりが激しい。
 最も参加回数が多いのはドイツのメルケル首相。安倍首相はメルケル首相につぐ2番目の古顔になる。
 発言力は参加回数が多いほど大きくなる。このことからも安倍首相がサミットを「引っ張る役」を。
 今年のサミットでの大きな議題は北朝鮮問題。サミット後すぐには歴史上初の米朝首脳会談が。
 それだけに今年のサミットはトランプ大統領の発言に注目が。
 昨年、イタリア南部シチリア島タオルミナでのサミットでは、トランプ大統領はほとんど影が薄かった。
 地球温暖化対策の「パリ協定」からの離脱もあり、大きな体を小さくしていた。
 だが、今年は北朝鮮問題もありサミットの主役を。そのトランプ大統領から安倍首相は最大の信頼を寄せられている。
 G7によるサミットが発足したのは1975年。フランスのランブイエで1回目を開いている。
 だが、年々G7の影響力が低下。GDP(国内総生産)をみてもG7は50パーセント前後に過ぎない。当初は80パーセントを占めていたのに。
 いまでは1999年にはじまったG20のほうがインパクト力を増している。
 すっかり寂しくなってきているG7だが、今年はかつてない熱い会議に。安倍首相の発言にも注目。
 サミット前日の7日にホワイトハウスでトランプ大統領と日米首脳会談も。

「対照的な現状」

 5月22日衆院本会議場で与野党の衆院議員13人が在職25年の「永年在職」の表彰を受けた。
 その13人は安倍晋三首相、野田聖子総務相、岸田文雄自民党政調会長、共産党志位和夫委員長ら。
 立憲民主党の枝野幸男代表は「美意識が違う」と表彰されることを辞退している。
 前原誠司民進党前代表も表彰されている。
 前原氏は枝野氏のように表彰の辞退はなかった。
 枝野氏と前原氏。まさに対照的だ。
 当選したのは二人とも1993年の衆院選挙。同期の桜だ。
 国会議員になるまでの経歴だが、前原氏は京都大学法学部を卒業し、松下政経塾に。
 子供の頃は苦しい生活をしてきている。中学のときに父親を亡くし、奨学金で学校に。最初の政治の世界は京都府議。
 枝野氏は東北大学法学部を卒業し、弁護士に。
 年齢は前原氏が枝野氏より2歳上。
 国会議員になってからの出世は前原氏のほうが一方的といっていいほど早かった。
 43歳という若さで民主党代表の椅子に坐っている。その後、民主党政権では国土交通相、外相を務めている。
 枝野氏が初めて民主党の要職に就いたのは02年の政調会長。東日本大震災のときは官房長官として不眠不休の対応を。
 いま両者は明暗に別れてしまっている。
 前原氏は民進党の代表として希望の党との合流をはかったが、選挙では惨敗。
 希望の党と民進党が統合した国民民主党にも入らず、まったくの無所属。
 枝野氏のほうは野党第1党の立憲民主党の代表として先頭に立っている。

「納得感がなければ」

 自民党石原伸晃元環境相が安倍晋三首相批判のトーンを高くしている。
 つぎつぎに、途絶えることなく出てくる財務省からの文書。
 昨年から国会は森友学園、加計学園問題で揺れっぱなし。
 5月24日、石原氏はテレビカメラの前で叫んだ。
 「納得感がまったくない。国民が求めているのは納得感。これがなければ政治とはいえない」
 決算文書の改ざん、廃棄問題に、ブチ切れたといった感じ。
 自民党総裁選まで4カ月余。
 本来なら「総裁ダービー」に石原氏も名前があがっているところ。
 2012年の総裁選には出馬し、96票を獲得している。
 このとき「総裁の椅子へまた一歩近づいた」と言われたものだ。
 石原氏自身、強気になっていた。
 それが東京電力福島第一原発事故に伴う中間貯蔵施設建設をめぐり大失言。 
 「最後は金目でしょ」
 このひと言で、総裁候補から後退。
 そればかりか自民党内で影がかすんでしまった。
 永田町では「あの人はいまどうしてる」とまで言われるほど存在感がなくなっていた。
 それがここにきて存在感をアピールだ。
 石原派は自民党派閥の中では最少の勢力で12人。
 だが、12人の石原派がクローズアップされている。
 石破茂元幹事長からは「秋波が」。
 5月23日には竹下派とも情報交換を。
 距離を置く安倍首相は石原氏の動きに神経をとがらせている。

「DAIGOの大叔父」

 ロック歌手でタレントとしてもテレビで大活躍しているDAIGO。
 売り出した決め手となったのが「竹下のおじいちゃん」。 
 口を開くときまったように「おじいちゃん」の話を。
 「おじいちゃんのひざの上で子ども時代を過ごした」と。
 おじいちゃんは竹下登元首相。
 いまでは「おじいちゃん」を口にしなくても、ひっぱりだこの人気者に。
 DAIGOの決めセリフといえば「ウィッシュ」だ。
 そして言葉をアルファベットの頭文字だけに簡略した「DAIGO語」をトレードマークとしている。
 永田町でこの「DAIGO語」が。
 DAIGO語を話しているのは竹下亘自民党総務会長。
 4月18日、岸田派が発表した政策骨子「K―WISH」(Kindな政治、Warmな経済などから頭文字を)をすかさず話のタネに。
 「ウィッシュはDAIGOのセリフではないか」
 竹下総務相は竹下元首相の実弟で、DAIGOの大叔父さんになる。
 DAIGOの大叔父が9月の自民党総裁選の「キーマン」になっている。
 今年3月14日の派閥パーテイーで額賀福志郎氏から派閥を継承して「竹下派」を四半世紀ぶりに復活させている。
 額賀派だったときの派閥の方向は「安倍支持」だった。
 だが、竹下氏は会長として、「フリー」な立場をとっている。
 「政策的に近いのは岸田派だ」とも。
 DAIGOの大叔父はどう出てくるか。

「100歳」

 100歳になった中曽根康弘元首相。
 1918年(大正7)生まれで、5月27日が誕生日。
 100歳を迎えたことの心境は、
 「まさにはるけくもかな、の感を強くする」
 そして、やはり憲法改正のコメントも加えている。
 「真剣に取り組んでいくことを期待する」
 安倍晋三首相は「憲法改正」を前面に打ち出しているが、これは中曽根氏のかねてからの持論でもある。
 「国民参加となる憲法の実現を目指すべき」
 東京帝国大学を卒業し内務省に入省。海軍主計中尉を経て、終戦のときは海軍少佐だった。
 国会議員になったのは1947年の衆院選での初当選で。
 ゴルフが趣味で、88歳のときでもドライバーは150ヤード。これが自慢に。 
 中曽根元首相は俳人だ。句集「中曽根康弘句集」も出版しており、これまで詠んできた句は数しれない。
 節々に心境を句であらわしてきている。
 そんな中でも、自ら「傑作」と胸を張っているのが、
 『暮れてなほ 命の限り蝉しぐれ』
 「生涯現役」を口にしており、「昭和の妖怪」「平成の妖怪」とも呼ばれてきている。
 来年には元号が変わる。大正、昭和、平成、そして新元号になることには「4代を生きることに深い感慨を覚える」と。
 2003年に議員バッジを外しているが、まだまだ政治の世界では現役。
 「妖怪」ぶりを発揮しつづける。自慢の句そのもので「暮れてなほ 命の限り蝉しぐれ」だ。