中央政界特報

■平成30年5月31日(木) 第5361号

「政治特報」

 「ポスト安倍」へ加速をつけている石破茂元幹事長。ひきかえ、慎重な構えの岸田文雄政調会長。その戦略は。

 石破氏の動きは活発だ。安倍晋三首相を批判するトーンを上げている。
 行動も「追い込み態勢」に。
 連休明けの5月11日には2月5日についで今年にはいって2度目の大阪入りを。
 岸田氏のほうはどうか。石破氏とは対称的。
 口でも行動でも控え目。派閥を岸田氏に譲った派閥名誉会長の古賀誠元幹事長がしびれを切らし「安倍政権の後は宏池会を主軸とした政権を」とたきつけているほど。
 岸田氏の戦略は安倍首相からの政権禅譲。
 外相のポストに4年半の長期にわたって座っていたのも「禅譲」の戦略から。
 安倍首相からは「もう少し我慢してほしい」とも言われていた。
 4月16日には安倍首相と会食。
 このときも安倍首相への注文は「心をひきしめて」で「ともに信頼回復に務める」と。
 だが、今年に入ってから安倍首相は厳しい局面に。
 永田町の上空には「解散風」まで吹きはじめてきている。
 「安倍首相が3選をものにすることができるかはわからない」(永田町筋)
 それでも岸田氏は石破氏のような動きには出てこない。
 4月18日、東京都内のホテルで開いた政治資金集めのパーティ―では政策骨子を発表。
 その政策骨子は「ボトムアップへ」「多様性を尊重する」など。
 それでも総裁選への対応は「国会が終わってから」と6月20日の会期末までは動かないことを明らかにしている。
 石破氏からはしきりにラブコールが送られている。
 「岸田氏との間に考え方の違いはない」と。
 だが、岸田氏はそんな秋波にもそっけない。
 額賀派をひきつぎ「竹下派」を起こした竹下亘総務会長からも「岸田氏の政策は理解できる」の声がかけられているのだが。
 各世論調査の「首相にしたい人」では安倍首相、石派氏ばかりか小泉進次郎党筆頭副幹事長にも差をつけられているのは、こうした「慎重」な姿勢からのものが。
 「飛ばない男とか飛べない男といわれているが、やるときはやる」とパーティーでは挨拶していたが、いましばらくは永田町内の流れの見極めに。

「勝敗を左右するかも」

 6月10日投開票の新潟知事選。
 自治体の首長を決める選挙だが、永田町にも勝敗の結果は直結している。
 来年夏の参院選にストレートに影響してくる。
 同知事選は東京電力柏崎刈羽原発の再稼働が最大の争点になる選挙。
 「当選者によって原発は止まるか、または再稼働となるかどうかが左右される安倍政権にとっては気をゆるせない選挙になる」(永田町筋)
 ここに小泉純一郎元首相がからんできそう。
 政権の座を降りてからの小泉元首相。
 「日本に原発は必要ない」と「原発ゼロ」を訴え続けることをライフワークにしてきている。
 「安倍首相がゼロにするといえばそれですむこと。なぜそう言わないのか」
 口を開くたびに安倍首相を批判し、講演会では「ゼロにしよう」の声を高くしている。
 その小泉元首相が知事選で火花が散っている新潟入りも。
 直接、候補者の応援をするわけではないがインパクトが違う。
 自民党は新潟知事選を「参院選につながる大事な選挙」と位置付けているだけに、小泉元首相の動向には神経をとがらせている。
 それでなくても小泉元首相は、安倍首相の自民党総裁3選に厳しい見方をしている。
 「むずかしいのではないか」
 4月18日夜には「同窓会」の名目で東京・赤坂の日本料理店「津やま」で山崎拓元副総裁、小池百合子東京都知事、二階俊博自民党幹事長らと会食。
 永田町への影響力をのぞかせている。

「86歳になった黄門様」

 『平成の黄門様』を自任している渡部恒三元衆議院副議長が、5月24日に86歳になった。
 誕生日の1週間前に開かれた誕生会には小泉純一郎元首相もかけつけている。
 渡部氏の自宅は福島県会津市。
 小泉元首相の自宅は神奈川県横須賀市。わざわざかけつけてきたことに渡部氏はびっくりし、そして大喜び。
 「どういうつもりでおいでになられたのか」
 小泉元首相と渡部氏はいま思いを一緒にしている。
 それは日本から原発をなくす「原発ゼロ」の思いを。
 小泉元首相は政権の座から降りたあと、「原発ゼロ」を訴え続けており、ライフワークとしている。
 渡部氏は東京電力福島第一原発の事故いらい、「原発をなくそう」のトーンを高くしている。
 二人はもともとは原発推進派だった。
 いまは「反対」での共闘の仲間。
 渡部氏は1932年5月24日、南会津郡生まれ。
 国会議員のスタートは自民党で田中派に属し、その後竹下派になってからは「七奉行」の一人に。
 国会議員になったばかりのころは「東北のケネディ」と自ら言い、そのあと「平成の黄門様」を自任するようになっている。
 自民党離党後は新進党を経て民主党に。
 民主党時代は国対委員長、衆院議院副議長などを歴任。
 その民主党はいまや分裂の繰り返しで、当時の面影はなくなってしまっている。
 この現状を「平成の黄門様」はどう思っているか。

「首相にしたい人」

 各世論調査の「首相にしたい人」では安倍晋三首相、石破茂元自民党幹事長、岸田文雄自民党政調会長、小泉進次郎自民党筆頭副幹事長の名前が。
 世論調査のたびに順番は入れ替わるが、注目されるのは小泉氏。
 ここにきて安倍首相、石破氏を飛び越えてトップに躍り出てくる世論調査も。
 安倍首相は9月の自民党総裁選での3選を目指している。
 石破氏は「今度こそ」はと12年の総裁選の雪辱に強気だ。
 小泉氏は総裁選の意欲を明らかにしているわけではない。
 「そのための勉強をしていかなくてはいけないと思っています」としか語っていない。
 いまは、将来に備えての修行の時ととらえている。
 それが安倍首相、石破氏をしのぐ世論調査結果まで。安倍首相の3選を「難しいのではないか」の見方をしている小泉純一郎元首相の、息子を見る目はこうだ。
 「おれよりしっかりしている」
 初当選以来、青年局長、復興政務官といったように自民党内での出世階段をトントン拍子で駆け上がってきており、いまは筆頭副幹事長として二階俊博幹事長を支えている。
 自民党きっての人気で、選挙では「応援」の切り札。いま小泉氏が主張しているのは国会制度改革。
 安倍首相、与党、そして野党にも批判の声を。
 「与党はもっと謙虚にならなくてはいけない」
 欠席戦術の野党に対しては「いまのままでは…」と。
 まずは腰をすえて安倍首相、石破氏、岸田氏の世論調査結果を見ている。

「止まらない麻生節」

 麻生太郎副総理兼財務相の失言、放言がとまらない。
 今年にはいってからというもの、口を開くたびに飛び出してきている。
 胸の内に思っていることをストレートに出してくる「麻生節」は国会の名物の一つにさえ。
 「麻生氏独特の言い回し」(永田町筋)とも。
 だが、最近の麻生節には自民党内でも「安倍政権の足を引っ張ってしまう」と。
 麻生派内からも危惧する声があがっている。
 「止まらない麻生節」には生い立ちの奔放さが。
 1940年9月20日生まれ。学習院大学政経学部卒業。
 父麻生太賀吉氏は元衆院議員。祖父は吉田茂元首相。愛妻は鈴木善幸元首相の娘。
 日本青年会議所会頭を経て国会議員になったのは79年の衆院選挙。
 国会議員になってからは経済企画庁長官、総務相、外相、党政調会長、党幹事長などを歴任し、08年には首相の椅子に。
 身につけているスーツは英国調。祖父譲りでタバコは葉巻。ウィスキーは「マッカラン」などが好み。
 政権担当中、ホテルのバー通いで批判の集中砲火を浴びている。
 漫画「ゴルゴ13」が愛読書になっており、全巻を所有していることが自慢。
 「全巻持っている人はそうはいないだろう」
 座右の銘の「天下為公」は天下は公のもの。麻生派の名称は「為公会」だ。
 東京・渋谷区の自宅は敷地面積約2400平方メートル。
 血液型はA型。
 岸信介元首相の孫の安倍晋三首相とのつながりは強く、安倍首相の3選を強く支持している。

「在職25年」

 5月22日の衆院本会議場。
 国会議員在職25年の衆院議員13人が「永年在職表彰」を受けた。
 安倍晋三首相も表彰され、昭恵夫人も同席。
 ほかでは野田聖子総務相、岸田文雄自民党政調会長、共産党志位和夫委員長、前原誠司元民進党代表らが。
 安倍首相が初めて国会議員のバッジをつけたのは1993年の衆院選挙。
 03年の小泉改造内閣で幹事長に抜擢され、その後、政権の椅子に。
 このときは1年で退いているものの、12年12月に再び首相に。
 以来、5年5カ月余に。
 佐藤栄作首相、吉田茂首相につぐ長期政権になっており、9月の自民党総裁選には3選を目指している。
 動きも積極的になっている。
 4月13日には大阪入りし、大阪府連臨時党大会に顔を出している。
 5月10日には中国の李克強首相に同行する形で北海道入り。札幌市で北海道議、地元経済界人との懇談を。
 今回の総裁選から地方票が重視されることになっており、確実に地方票をとりまとめようとの胸の内がありあり。
 それにあわせて外交でも攻勢を。
 5月26日にはロシアに飛び、モスクワでプーチン大統領との首脳会談を。政権の座に就いてからプーチン大統領との首脳会談は21回目。
 6月8日からはカナダでのG7(主要7カ国首脳会議)が。
 さらに米国トランプ大統領との首脳会談の話も進められている。
 5月19日に福島県いわき市で14の島国を迎えた「島サミット」でも自信をのぞかせていた。

「強気いっぽうだが」

 立憲民主党枝野幸男代表が強気だ。
 ここにきて「解散」「不信任案」の応酬が激しくなってきている。
 自民党森山裕国対委員長が「内閣不信任決議案が提出されたら、解散も選択肢の一つになる」と言ったのを受け、枝野代表はこう切り返している。
 「解散が選択肢にあるというのなら、内閣不信任決議案を出して、解散してもらいましょうか」
 対決姿勢をあらわにしている。
 「解散を巡ってのチキンレースになるかもしれない」(永田町筋)
 枝野代表には内閣不信任決議案を出すことで、カジノ法案を廃案にもっていけるという戦略もある。
 それにしても真っ向からの対決姿勢。
 枝野代表の強気には、野党第一党の座を守った自信が。
 希望の党と民進党が統合して国民民主党が誕生。
 このとき「立憲民主党が野党第一党から転落するのでは」とみられていたが、そうはならなかった。
 立憲民主党には福田昭夫氏、小川敏夫氏、鉢呂吉雄氏ら10人が民進党から加入。
 結局、国民民主党は62人、立憲民主党は63人。
 枝野代表は強気だが、「解散、総選挙」となったときの不安はある。
 各世論調査での支持率は立憲民主党は野党の中では飛び抜けて高く10パーセント強。
 だが、まだ全国47都道府県のうち県連があるのは20県。残りの27県には選挙戦で欠かせない県連がない。
 手足となって動く地方議員数も自民党より2000人余も少ない。