中央政界特報

■平成30年5月3日(木) 第5357号

「政治特報」

 永田町が俄然騒がしくなってきた。安倍晋三首相が切り札の「伝家の宝刀を抜く」か。解散風が吹き出した。

 「解散あり」の声は自民党内からではなく、野党から上がっている。
 「解散総選挙は十分に考えられる」 
 希望の党玉木雄一郎代表の見方だ。
 各世論調査で安倍政権の支持率は軒並みに急落。
 なかには30パーセント台を割り込んでしまった調査結果も。
 永田町で言われている定説がある。
 それは「支持率が30パーセントを割り、不支持率が50パーセントを超えると内閣は持ちこたえられない」というもの。
 ここにきての安倍内閣は、この定説から「危険水域」に。
 安倍首相が目指しているのは9月の自民党総裁選での3選。
 2020年の東京オリンピックを首相として迎える長期政権。
 12年12月26日に第2次政権を発足させてから5年5カ月に。
 すでに佐藤栄作首相、吉田茂首相につぐ歴代3位の長期政権になっている。
 だが、いまその立場は極めて厳しいものに。
 長期政権を担当した小泉純一郎元首相は言っている。
 「3選は難しいだろう」
 この窮地を乗り切ることができるか。
 永田町には「内閣総辞職」の声もあるが、にわかに「解散」の見方も。
 「いまの状況は、解散でしか乗りきれなくなっている」
 絶体絶命の窮地からの起死回生。
 過去にも「解散」に出た首相がいる。佐藤栄作元首相だ。
 自民党内にスキャンダルが噴出した1966年12月27日、佐藤首相は「解散」に。
 いまも語りつがれている「黒い霧解散」。
 いまの状況は「黒い霧解散」のときとよく似ている。
 1980年5月19日には大平正芳首相が「ハプニング解散」に出ている。
 前年79年10月7日に選挙を行っており、7カ月しかたたなかったが自民党が勝利している。
 安倍首相は昨年10月に選挙をしており、大平元首相の「ハプニング解散」がまさに前例に。
 「解散できる状態ではない」(永田町筋)の声があるが、「解散風」を強くさせる要因もある。
 各世論調査でダウンしているとはいえ自民党の支持率は30パーセント台。ひきかえ野党では立憲民主党が一番の支持率とはいえ、10パーセントがやっと。
 解散は首相だけが持っている専権事項。安倍首相の腹の内ひとつだ。

「神通力にカゲリ」

 8月2日で、小池百合子東京都知事は3年目に入る。
 節目を迎えるが、その表情は厳しい。
 衆院議員から都知事に、そして昨年7月の東京都議選でみせていた「百合子スマイル」は消えてしまっている。
 都庁番記者との定例記者会見ではニコリともしなくなった。
 厳しい表情がより厳しくなった。
 4月15日に投開票された東京都の練馬区議補選(欠員5)での寂しい結果によるものだ。
 小池知事が特別顧問を務める「都民ファーストの会」の公認候補2人がともに落選。
 これは小池知事には大きなショックに。
 練馬区は小池知事のお膝元。衆院議員時代はここを地盤としていた。
 小池知事の同区での影響力は絶大で、昨年の都議選では都民ファーストの会から出馬した2人が、1位と2位で当選している。
 「あそこだけは誰が立っても無理」
 自民党関係者からはそう言われている。
 その小池知事の絶対的地盤で補選をものにできなかった。
 小池知事の「神通力」に明らかにカゲリが。
 昨年の同時期にくらべ、今年小池知事をとりまく環境は格段に厳しいものになっている。
 昨年の今頃、小池知事はテレビのワイドショーを独占していた。
 「都民ファーストの会」は追加公認を含め、55議席を獲得。都議会で第1党に。
 1年間の断酒を解禁。ビールを口にし「おいしい」と。
 わずか1年前のことだ。いまの小池知事には疲労の色が濃い。

「団結を誇示」

 4月になってから、自民党各派閥の動きが活発になっている。
 パーティー、総会が都内のホテルで。
 国会の上空は雲行きがあやしくなっている。
 4月12日には東京・紀尾井町のホテルニューオータニの宴会場「鶴の間」で麻生太郎副総理兼財務相が率いる麻生派のパーティーが。
 パーティーは政治資金集めと、派閥の団結をアピールする狙いが。
 麻生氏はいま極めて厳しい状況にある。
 それでも声を高くしていた。
 「政権をど真ん中で支えていく」
 パーティーには安倍晋三首相もかけつけている。
 この日の安倍首相はスイスのベルセ大統領を官邸に迎え、儀仗隊による栄誉礼、首脳会談、公邸での首相主催の夕食会と分刻み。
 その間をぬって顔を出し、麻生氏とがっちりと握手。
 麻生派のパーティーから6日後の18日夜には岸田文雄政調会長が会長の岸田派がやはり政治資金集めと団結誇示のパーティーを。
 これまで岸田氏は総裁選へ向けての姿勢を明らかにしていないが、パーティーの席上、政策骨子を発表。
 「飛ばない男、飛べない男だと言われているが、そういうことはない。やるときはやる」と語気を強くしていた。
 翌日の19日には竹下派が総会を。
 この総会で、竹下登元首相の実弟、竹下亘総務会長が額賀福志郎氏から派閥を引き継ぎ「竹下派」に。
 4月23日にはホテルニューオータニ「鶴の間」で二階派パーティーがあり、安倍首相も挨拶を。

「存在感アピール」

 小泉純一郎元首相の私邸は浦賀水道を見下ろす、神奈川県横須賀市の高台にある。
 日頃は長男で俳優小泉孝太郎氏が出演しているドラマをテレビでじっくりと観ている。
 「演技など、なんだかんだとは何も言わない」と孝太郎氏。
 次男の進次郎氏にも「政治の話はしない」でいる。
 孝太郎氏、進次郎氏はともに独身。
 「適齢期」にあるのに、恋のウワサも立っていない。
 これについてもいっさい「口出し」はしていないようだ。
 そんな小泉元首相が、今年にはいってから、それも桜から青葉の季節になったいま、横須賀から出かけることが多くなっている。
 政権の座をおりてからというもの「日本に原発は必要ない」と原発ゼロ活動をライフワークとしている。
 その講演が横須賀から出てくるおもなことになっている。
 4月14日には茨城県の水戸市で講演。
 横須賀から降りてくるのはそれだけではない。
 永田町のきなくさい空気をさらにきなくさくさせる動きを。
 安倍晋三首相がトランプ大統領との首脳会談のため、米国フロリダに飛んだ18日夜には東京・赤坂の料亭「津やま」にその姿は見られた。
 二階俊博自民党幹事長、小池百合子東京都知事、山崎拓元自民党副総裁、武部勤元自民党幹事長と会食。
 「小泉政権時代の同窓会」と言いながら、安倍首相へ牽制球を。
 「3選は難しいな。なにを言っても信頼がなくなっている」と。

「戦略の違い」

 「ポスト安倍」が騒がしさを増している。
 「6月に」いや、「9月に」と、永田町では安倍晋三首相の退陣のXデーまでがなにかとささやかれだした。
 それだけではない。
 「安倍首相は解散に出るのではないか」と解散風まで。
 あわせるように動きが活発になってきている石破茂前地方創生相と岸田文雄自民党政調会長。
 両者の戦略はまったく対照的だ。
 石破氏は岸田氏が4月19日の政治資金集めのパーティーで明らかにした政策骨子に「似ている」とアプローチを。
 岸田氏との連携に意欲を。
 だが、戦略は違う。石破氏は徹底して安倍晋三首相の政策を批判している。
 安倍首相が強い意欲を燃やしている憲法改正法案についても。
 安倍首相は改憲だが、石破氏は違う。
 「安倍首相との違いをあらわすために、批判のトーンを高くしている」(永田町筋)
 岸田氏は批判のトーンを抑え気味。
 このことで「なにもものを言わないのはおかしい」と言われているほど。
 「政権が厳しい状況にあるいまこそ、支えていくべきの考えで政権批判を抑えている」(永田町筋)
 「批判」と「支える」の違い。
 各世論調査の「首相にふさわしいのは」では、石破氏が「ふさわしい」で安倍首相をしのいでいる世論調査も。
 岸田氏の戦略は当初より安倍首相からの「禅譲」に。
 両者の戦略の違いがどんな結果につながってくるか。

「女性政策」

 「ポスト安倍」で名前があがっている石破茂前地方創生相、岸田文雄政調会長、野田聖子総務相。
 動きが活発なのは石破氏と岸田氏。
 ひきかえ静かな野田氏。
 地元岐阜市に政治塾「岐阜女性塾」を立ち上げ、国会内に与野党の枠組みを超えた超党派議員による「ママパパ議員連盟」を立ち上げているが、動きそのものは石破氏、岸田氏に遅れをとっている。
 石破氏、岸田氏は他派閥幹部との会食を重ねている。
 野田氏はそういった会合、会食はみられない。
 そんな野田氏が総裁選へ向けての政策の一端を明らかにしている。
 それは女性政策。日本は世界に類のない少子高齢化に進んでいる。
 総務省が発表した昨年10月1日現在の人口推計でそのことは明らかに。
 総人口は前年より22万人余も減少。これは7年連続の減少だ。
 一方、65歳以上の高齢者は前年より56万人余も増えている。
 75歳以上は1748万人余。総人口の13・8パーセントに。
 野田氏は強調している。
 「少子化、そして人口減少は女性政策につながっている」
 野田氏は持論として選択的夫婦別姓制度についても声を高くしている。
 総裁選には「女性政策」を争点にする考え。
 石破氏、岸田氏に対抗していく上で、野田氏の弱みは自前の派閥を持っていないこと。
 岸田氏は47人の「宏池会」、石破氏は20人の「水月会」を率いている。
 前回の総裁選では野田氏は立候補に必要な20人の推薦人に1人足りずに出馬を断念している。

「世界の100人」

 安倍晋三首相が米トランプ大統領らとともに「世界の100人」に選ばれた。
 米国の雑誌タイムが毎年行っている『世界で最も影響力のある100人』でのランク入り。
 安倍首相は2014年にも選ばれており、2度目ということに。
 選ばれた理由は「日本経済をよみがえらせた」。
 日本からは安倍首相のほかにソフトバンク孫正義社長が入っている。
 12年12月26日に政権の座に復帰してから5年5カ月余。
 「3本の矢」を掲げ、アベノミクスを前面に。
 「日本の営業本部長」を自認し、トップセールスマンとして世界を飛びまわってきている。
 訪れた国、地域は歴代首相で群を抜いて多い。
 「地球儀俯瞰的外交」を唱え、世界の大統領、首相との首脳会談の多さも群を抜いている。
 サミット(主要先進7カ国首脳会議)もすでに5回出席。
 これは現在の7カ国首脳ではドイツのメルケル首相につぐ回数。
 それがいま、政権の座に復帰以来最大の危機的状況に立たされている。
 昨年来、安倍首相は国会で野党の激しい追及に。
 この1年半余で顔には疲労の色が濃くなっている。
 ここにきて各世論調査での支持率は急落。
 世論調査によっては政権維持で「危険水域」といわれる30パーセントを割り込んでしまっているものも。
 国会は大荒れ状態。永田町で言われている「一寸先は闇」の状態だ。
 いまこそ「世界で最も影響力のある100人」の1人としての真価が問われている。